【ボイトレ 歌い方】『幾億光年』 (Omoinotake)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)
今回は日本のスリピースバンド「Omoinotake」による2ndシングル「幾億光年」の解説をしていく。
【歌詞の考察】
この楽曲はドラマ「Eye Love You」の主題歌として書き下ろされた楽曲。
「『幾億光年』は、どんなに遠い距離や長い時間に隔たれても、たとえもう2度と会えず届かなくても、決して褪せることのない、愛しい人への不変の想いを描きました」とインタビューである通り、楽曲を通して想い続ける人への気持ちが描かれています。
歌詞だけを読んでみると少し重ための失恋の内容に見て取れるのですが、楽曲の雰囲気やメロディのキャッチーさも相まってどれだけ時が経っても変わらない想いが際立っている点に注目。最初は歌詞だけを、次に楽曲全体と合わせて読んでみるとメロディ、アレンジメントの重要さが良く分かると思います。
【メロディとコード・リズムの兼ね合いを検証】
AメロのKeyはEbとなっています。
コード進行は
A
|Eb Gm7|Ab Eb Bb/D|
|Cm7 F7|Fm7 Fm7/Bb Bb7|
A’
|Eb Gm7/D|Ab/C Eb/Bb Bdim7|
|Cm7 F7|Fm7 Fm7/Bb Db7|
とかなり複雑なコード進行になっています。
Aセクション3小節目F7はセカンダリドミナントとして考える事が出来ますが、解決先がFm7と本来進むべきAbの代理コードとなっています。ここでは4度上であるBbに解決しない少し特殊なセカンダリードミナントである事にも注意をして下さい。他にもA’セクションでは基本はAセクションと同じコード進行ですが、オンコードを使用しベースのみをなだらかに下降させています。またBメロの転調に向けてBメロ1小節目のGbのドミナントにあたるDb7を使用して転調をスムーズにしています。
コードのみを解説するとかなり複雑になってしまうのですが、メロディラインとしてはスケールからアウトする事はなく、コードトーンを中心に作られているので分かりやすいメロディとなっているかと思います。
注意したいのはリズム。
16分音符で細かくリズムを感じておけないないとノリが上手く掴めずダラダラとした歌唱になってしまいます。特に、16分音符の裏拍が多く出てくるのでしっかりとリズムをハメれるように意識をしてして下さい。最初から早いテンポで練習するのでは無く、ゆっくりとしたテンポにして指などで16分を数えながらタイミングを覚えると良いでしょう。
Bメロに入ってからはKeyがGbに転調しています。
コード進行は
|Gb |Fm7(b5) Bb7|
|Ebm7 |Dbm7 Gb6 Gb7|
|Cm7(b5) Cbm|Bbm7 Adim7|
|Abm7 Bbm7 Cb Cm7(b5)|Dbsus4|
サブドミナントマイナーであるCbmやパッシングディミニッシュでのAdim7を使用し、Cm7(b5)からクリシェラインのような流れを作り出しています。
メロディラインとしてはAメロと同様にスケールからアウトする事は無く、メジャースケール内でコードトーンを中心に構成されています。
16分音符の裏拍が多く出てくるAメロと違ってBメロでは8分音符の裏拍でリズムを取ることが多くなります。比較的リズムを取り易くなると思いますが、タイで伸びている8分音符の際にそのまま8分音符でカウントをしないように注意が必要です。この際もしっかりと16分音符を2つカウントしていないとリズムの疾走感が失われてしまいます。下記譜面を参考にして意識をして下さい。
サビに入ると先程までの16分音符が中心の細かいリズムと打って変わって8分音符、4分音符が中心の伸びやかなリズムになり、世界観が開けるイメージを作り出しています。また、リズムが大きくなる事によって歌詞の言葉一つ一つが強調されています。
コード進行としては
|Gb |Fm7(b5) Bb|Ebm7 |Dbm7 Gb7|
|Cb△7 Db/Cb|Bbm7 Ebm7|
|Abm7 Cm7(b5)|Gb/Db Db7|
こちらも今やJpopsでは定番となっていますがAメロ、Bメロと同様のコード理論によって構成されています。
サビではメロディが非常に高い所をキープしたまま続いていくのでとても歌唱が難しいセクションとなっています。最高音はEbですがDbまでは裏声を使わずでの発声となります。また、サビ入りはいきなりDbの音から始まり、Gの音まで下降します。非常に難しい箇所となりますので沢山練習を重ねて下さい。
サビを2回しした後に追加されるメロディでは再度16分音符でのモチーフを展開して8分音符へと繋ぎサビの最後にもう1つ波を作り出しています。中心となるリズムが変わるとテンポが崩れ易くなるので注意をしながら歌唱して下さい。
また、サビ終わり〜2番Aでは急に現れるBb7の一小節のみでAメロのEbkeyに戻らなければなりません。しっかりとコード感を聴き取り転調しましょう。
間奏明けのDメロになると
サビでも使用されていたリズムでモチーフが展開されています。
しかし、休符が入っているかタイで伸びているかによって、リズムの聴こえ方が変わる事に注目です。リズムのみの数え方は同じですが、ニュアンスは全く違うものとなりますので意識をして下さい。また、ここでもサビと同様に最高音はEbとなります。Eb、Dbの音は裏声となりますが非常に高いのでフラットしないように注意をしましょう。
いかがだったでしょうか。
16分音符のノリや高い音域など非常に難易度の高い曲だと思われます。また、声域の低い方とてもキツイKeyになっているので無理せずKeyを下げる事も視野に入れ歌唱を楽しんで下さい。
声について
女性でも原曲キーで問題ないほどの高音での歌唱が続く曲です。高音部で母音を明確に歌おうとすると、当てにくくなったり、続けての歌唱が苦しくなったりするかもしれません。
曖昧母音でラクに歌える音色をベースに、唇や舌の前方を上手く使って発音してみましょう。喉(声帯周り)に負担を感じない程度のキーからトライしてみてください。