【ボイトレ 歌い方】『ライラック』 (Mrs. GREEN APPLE)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)
今回は日本の大人気ロックバンドMrs. GREEN APPLEによる9作目の配信限定シングル「ライラック」の解説。
【歌詞の考察】
タイトルの「ライラック」はムラサキハシドイという花の名前で花言葉は「友情」や「思い出」。TVアニメ「忘却バッテリー」のOPとして書かれたこの楽曲は青春をテーマとして、「青と夏」のアンサーソングのような感覚で作られた楽曲となっているようです。
「青と夏」が青春真っ只中の事を歌った楽曲に対し、この楽曲は大人になってから青春時代を思い返すような内容になっています。歌詞全体は少し遠回しに書かれているのですが、深く考えずとも意味が見て取れると思います。是非少し大人になった感覚で歌詞を読み直してみて下さい。
【メロディとコード・リズムの兼ね合いを検証】
楽曲のKeyはBbMajの箇所とGMajの箇所、最後にはBMajに転調をします。
BPMは150。
先ずはAメロから。
コード進行は
|Bb Cm7 Bb/D|Dm7 |
|Eb F Bb|Bb F/A|
|Gm Bb/D Eb|Eb |
|Eb F Gb|F |
A’に入ってからは
|Bb Cm7 Bb/D|Bb/D |
|Eb F Bb|Bb D7|
|Gm Bb/D Eb|Eb |
|Cm7 F Bb|Bb G/B |
とA、A’で展開が少し変わっています。
コードがテンポよく変わっていくので展開を掴むのに少し時間が掛かると思います。コードが変わるタイミングとメロディのリズムが同じという事を意識してみましょう。また、8分音符でのカウントがしっかり刻めるとシンコペーションしている2拍裏が取り易くなるのでリズムが安定してきます。メロディラインとしてはコード進行に沿って綺麗にコードトーンをとっています。2種類の2小節モチーフを使用して展開を作っている点にも注目です。
Aメロでの最大の難点は歌唱する際の言葉の発音です。リズムに対してそれ以上の言葉が詰まっている箇所が数箇所あります。母音が同じ言葉なら発音の流れで歌えてしまうのですが、この楽曲の場合全く違う母音での歌唱となります。言葉をハッキリと発音が出来ていないととてもダラッとして聴こえてきてしまいます。BPMも150ととても速いので難しいですが、意識をして沢山練習を重ねて下さい。
Bメロに入ってからはKeyがGMajに転調しています。
コード進行は
|C△7 |C△7 |G/B |G/B |
|Am7 |G/B |Cm7 |Gb Ab|
サブドミナントマイナーであるCm7やサビのKeyBbMajに向かうGb、Abが特徴的です。
メロディラインとしては所々音を取るのが難しい箇所があると思います。KeyのスケールであるGmajスケールを基準としているのですが、1小節目C△7、5小節目Am7ではそれぞれ2nd、4thと小節頭の音がコードトーンではない為注意が必要です。
Bメロで特に意識をしたいのはリズムです。
Bメロに入ってからの4小節間はBPMを半分にするハーフテンポで演奏されています。メロディも同様にハーフテンポを感じて歌唱をしたいのですが、Bメロではボーカルのみ1拍を3連符として考えシャッフルのリズムで歌唱をしていると思われます。Bメロで急にアンサンブルのグルーブがフワッとするのはこれが理由です。
また、メロディの符割が3拍・3拍・2拍で1つのフレーズとなっている為楽器と合わせるのが非常に困難なセクションとなっています。先ずはメロディのみでしっかりと拍数を数えながら練習をして下さい。
5小節目からは通常のテンポで演奏されますが、ここから演奏はストレートの8ビートなのに対して、ボーカルのみシャッフルとなっています。こちらも先と同様しっかりとカウントを意識して歌唱するように心掛けて下さい。
次はサビのコード進行です。
|Bb F/Eb|Bb/F Bb F/A|
|Gm7 C/E|Cm Bb/D Ebm|
|Bb/D Eb|Bb/F D7/F#|
|Gm7 F|C/E |
|Eb△7 F|Gm7 |
|Eb△7 D7|Gm7 F|
|Eb D7 Gm7|Gm7 C7|
|Cm7 Cm7/F|Bb |
となっています。
BPMが早くコードも多いセクションですが、オンコードを使用する事によって流れをなだらかにし、聴きやすくしています。1〜4、5〜8小節で同じメロディモチーフを使用していますが、繰り返しのコード進行を使用せずドラマチックな展開を作り出している点にも注目をしてみましょう。
メロディの流れとしては、最高音はBbで地声の箇所と裏声の箇所がありますので使い分けに注意をしましょう。A、Bとは違い比較的歌いやすいメロディラインにリズムとなっています。サビをあえてシンプルにする事によってサビのインパクトがしっかりと残る点に注目。Aメロと同様にBbメジャースケール内でコードトーンを中心に構成されていますがメロディの綺麗さとコード進行の綺麗さを別々で優先している箇所などではコードトーンが一切入ってない場合もあるのでピッチがズレないように注意をして下さい。
2番Bメロ後のCメロに当たる箇所では4分の3拍子と4分の4拍子が入れ替わりパターンが複雑になっているので下記譜面を参考にしていただけたらと思います。
コード進行は
|Gm7|Dm7|Eb|Bb F/A|
|Gm7|Dm7|Eb|Bb F/A|
|Gm7|Dm7|Eb|Bb F/A|
|Gm7|Dm7|Eb Bb/D|Bbm/Db Ab|
基本はダイアトニックコードに従っていますが、16小節目にモーダルインターチェンジを使用して次に繋ぐ展開を作り出しています。基本的には同じリズム・メロディのモチーフの展開となります。1〜4小節目まではバッキングギターが分かりやすくリズムを出してくれているので比較的に楽に歌唱が出来ると思いますが5小節目以降は指標となるリズムが無くなるのでカウントを忘れないよう注意をして下さい。
続くDメロに入ってからは新しいメロディで落ち、ラストサビへの展開作り出しています。落ちというのアンサンブル全体の音数を減らしボーカルを目立たせる手法。落ちを作る事で流れを変え、その後に続くセクションを盛り上げる為に使用されます。基本的には落ちサビ→ラストサビの流れが多いですがこの楽曲では新たに落ちのセクションを作っています。
コード進行は
|Eb F|Gm |Eb F|Gm |
|Eb F|Gm Bb/D|Cm7 F|Bb |
|Eb F|Gm |Eb D7|Gm Bb/Ab|
|Eb F|Gm7 Bb/D|Cm7 F|Bb |B |
こちらも基本的にはダイアトニックコードに従ってコードが構成されています。2小節のリズムモチーフに上がり下りのメロディが特徴的。ラストサビ後のシンガロング(アーティストとオーディエンスが一体となって歌うこと)のセクションでKeyが変わりますが同じメロディのライン、そしてリズムで再度展開されます。先に一度提示をしておく事で後のパートで楽曲を初めて聴いた際でもすぐに歌えるよう工夫がされています。
シンガロングをするパートという事なのでメロディ、リズムはそこまで難しく構成されてはいません。ですが、Aメロと同じように1つのリズムに母音の違う言葉が詰め込まれている箇所がありますので発音をしっかりと注意をして歌唱して下さい。
ラストのサビでは半音上に転調をしKeyがBmajとなっています。最高音がBとなりますのでピッチがフラットしないように注意。
いかがでしたでしょうか?
セクションも多く、注意しなければならない事が多いと思いますが、上手く歌唱する事が出来ればとても楽しい楽曲となっています。自分の中のカウントをしっかりと意識て練習を重ねて下さい。
声について
言葉が詰まっている箇所で母音をはっきり発音すると、もたってしまうので、その場合は曖昧に発音しましょう。全体的に声帯は薄く使い、素早い変化に対応できるようにしましょう。また舌の動きをミニマムに、かつ発音が明瞭になるよう唇をうまく使って練習してください。
また、女性は原曲キーでも歌えると思いますが、低音部がかなり低く鳴りにくくなってしまうので、+2〜+4で高音がよく鳴るキーで歌ってください。