【ミュージカル曲コラム】『ゆめをつづけて』ユタと不思議な仲間たち 歌い方・歌 上達法
【曲名】ゆめをつづけて
【演目】ユタと不思議な仲間たち
【演目について】
本作は、岩手南部出身の作家、三浦哲郎の原作を基にしたミュージカルで、初演は1977年に行われた。演出は浅利慶太が担当し、劇団四季作品の中でも長い歴史を持つオリジナルミュージカルで「生きることの素晴らしさ」を説いている。
浅利慶太は、フランス語に似た半母音で抑揚のある「南部弁」のセリフや、古き良き日本の自然美や文化を感じ取れる舞台美術にこだわった。音楽は「津軽海峡・冬景色」などのヒット曲を生み出し、ミュージカル『夢から醒めた夢』『李香蘭』などの作曲も担当した三木たかしが手がけている。この作品では、演歌や民謡の要素を盛り込み、日本の世界観を曲に反映している。
東北の小さな村へ引っ越してきたユタは、村の子供達と馴染めず、いじめられ孤独を感じていた。ある日、地元に代々伝わる座敷わらし達と出会うユタ。彼らは飢餓や間引きによってこの世で生きることが叶わなかった過去を持っていた。そんな仲間たちとの友情と様々な試練により、ユタは生きることの素晴らしさを学び、逞しく成長していくストーリーとなっている。
【曲について】
本楽曲は、ユタの村の友人”小夜子”によって歌われるラストソングである。ユタは座敷わらし達との交流を通じて生きる勇気や人と向き合う大切さを学んでいく。しかし、座敷わらしと人間の世界には超えられない壁があり、別れの時が訪れてしまう。その際、小夜子がこのナンバーを歌うことで、座敷わらし達の思いを代弁し、ユタが別れを乗り越え、未来への新たな一歩を踏み出せるように背中を押している。
【歌唱ポイント、アプローチ】
この曲は小夜子がユタに向けて歌いかけるナンバーのため、直接語りかけるようなニュアンスを大事に。そのため、歌詞の内容を理解して、フレーズごとに感情の波を作り、単調にならないように練習が必要です。全体として、高音域と中音域を行き来する場面と切れ目のない旋律が多いため、ブレスの位置を楽譜を見ながらしっかりと計画した上で練習に取り組みましょう。
構成としては大きく分けてAパートとBパートがあり、A→B→A→Bの繰り返しになっています。Aパートが座敷わらしを想う歌詞、Bパートは未来へ向く歌詞になっているため、切なさから希望へと移り変わる感情を声色を使い分けて表現する意識を。
最後のBパートの冒頭歌詞『明日をください』では、特に力強く歌うことで未来への希望や決断を表現できます。また、この楽曲は方言で歌われるため、まずは標準語での練習を行ってから、徐々に南部弁のアクセントを取り入れると効果的です。