【ミュージカル曲コラム】『Alone here with you』DEATH TAKES A HOLIDAY 歌い方・歌 上達法
【曲名】あなたと2人なら / Alone here with you
【演目】DEATH TAKES A HOLIDAY
【演目について】
原作は、イタリアの劇作家アルバート・カゼッラによる戯曲『La morte in vacanza』(1924)。これを1929年にウォルター・フェリスが『Death Takes A Holiday』として英語で戯曲化した。その後、同タイトルで1934年にフレドリック・マーチ主演で映画化(邦題:明日なき抱擁)、1998年にはブラッド・ピット主演で『ミート・ジョー・ブラック(邦題:ジョー・ブラックをよろしく)』としてリメイクされている。『TITANIC』を制作したピーター・ストーン(脚本)とモーリー・イェストン(作詞・作曲)のコンビにより、2011年にオフ・ブロードウェイ版が産み出された(2003年ピーター没後、トーマス・ミーハンが執筆を継承)。作曲のイェストンは他にも『ファントム』『グランドホテル』『タイタニック』『ナイン』等の音楽も作曲している。日本では2023年に宝塚版が上演された。
舞台は、1920年代が始まって間もない頃。第一次世界大戦とスペイン風邪で多くの命が奪われていた中、死せる魂を“あちら側”へと導いてきた死神は疲れ果てていた。ある時、イタリア北部の山道を車で走るランベルティ公爵一家は、スピードの出し過ぎで事故を起こしてしまう。一人娘グラツィアは道に投げ出されたが、死神はその命を助けることにした。
なぜ人々は死・死神を恐れるのか。人々が執着する命・人生、そもそも生きるとは何か。人の目を通して知りたいと願った死神は、ロシア貴族のニコライ・サーキの姿を借りて二日間の休暇を公爵一家と共に過ごす事にする。グラツィアと休暇を過ごすうちに、死の象徴である死神は愛を知り、「愛は死を超える」を体現する作品となっている。
【曲について】
本楽曲は、第一幕のラストで死神とグラツィアによって歌われるデュエットソングである。人間の感情を理解するため、人間になりすましている死神に惹かれるグラツィア。死神もまた、グラツィアに特別な感情を抱くようになる。この曲はお互いが感じていた孤独を共有し、2人の関係が深まっていく様子が歌われている。また、死神にとって初めて人間の儚さや愛を体験する瞬間も描かれている。
【歌唱ポイント、アプローチ】
この曲はロマンチックなデュエットソングのため、全体を通してレガートに、またフレーズを大きく感じ伸びやかに歌えるように、ブレスコントロールを意識して練習してみて下さい。
死神は初めて人間の感情を経験しますが、自分の感情についてまだ理解ができていないため、ためらいや疑念を表現するように控えめなトーンで歌い始めると良いでしょう。一方、グラツィアは死神の未知の魅力に対しての好奇心と警戒心を意識して歌いましょう。歌が進むにつれて、お互いの不安は純粋で無防備な愛へと変化します。この感情の開放を表現するために、声に暖かさを加えることを意識することがポイントです。