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【ミュージカル曲コラム】『死ぬのもそれほど悪くない / Dyin’ Ain’t So Bad』ボニー&クライド / Bonnie & Clyde 歌い方・歌 上達法

【曲名】死ぬのもそれほど悪くない / Dyin’ Ain’t So Bad
【演目】ボニー&クライド / Bonnie & Clyde


【演目について】
『ボニー&クライド』は、20世紀初頭の世界恐慌下のアメリカで実在した犯罪者カップル、ボニー・パーカーとクライド・バロウの生涯を描いたミュージカル。

 

大恐慌時代のアメリカ南部を舞台に、貧困と抑圧の中で刺激と自由を求めて犯罪の道に進む若きカップルの姿が描かれる。映画スターを夢見ていたボニーと脱獄を繰り返すクライドの二人は愛と犯罪を重ねながらも、避けられない悲劇へと向かっていく。

 

フランク・ワイルドホーンが作曲、ドン・ブラックが作詞、アイヴァン・メンチェルが脚本を担当し、2011年にブロードウェイで初演された。ワイルドホーンによる楽曲は、ブルースやカントリー、ロックの要素を取り入れ、アメリカ南部らしい雰囲気を持ち、ボニーとクライドの衝動的な愛と破滅的な運命を、情熱的かつドラマティックに描き出した作品となっている。


【曲について】
本楽曲は、第二幕でボニーが歌うソロナンバーであり、「愛に満ちた短くも刺激的な人生」と「長く孤独な人生」を対比して、愛する人と生きることの意味や、どんな結末を迎えようとも後悔しないというボニーの強い意志が歌われる。

 

犯罪者としての道を歩んできたボニーとクライドを待ち受けているのは、明るい未来ではなく「死」であると気づいたボニー。それにもかかわらず、彼女は「愛する人と一緒なら、死ぬこともそれほど悪くない」と歌い、クライドへの深い愛と運命を受け入れる覚悟を示す。

 

ワイルドホーンのメロディーは、しっとりとしたバラード調から、情熱的なクライマックスへと展開し、ボニーの感情の振れ幅を際立たせている。


【歌唱ポイント、アプローチ】
この楽曲は、心情を吐露する内容のため、歌詞を語るように歌いましょう。ボニーの心情や歌詞の内容を理解するために歌詞カードを作り、ブレスの位置も計画的に考えながら練習をすると効果的。

 

また、ボニーの内面的な葛藤と愛への強い信念を表現するために、後半に行くにつれて歌い方に変化をつける練習もしましょう。歌い出しはサビから始まり、最初の音がチェンジ域の音程なので、感情が入りすぎて力んでしまったり、乱暴にならないように歌い始めることが大切です。

 

冒頭部分はボニーが死期を悟り、「死」に対する考えが語られますが、曲が進むにつれて、ボニーの愛の強さや覚悟が増していくので、感情の高まりを意識しましょう。ここでは声量を段階的に強める練習をすると良いです。楽曲の終盤は、ボニーが自分の運命を受け入れる部分であるため、感情を込めながらも、シンコペーションのリズムはしっかりと感じて、フレーズのひとつひとつを大切に歌うと美しい仕上がりになります。

 

全体を通してサビパートが3回ありますが、全て同じ歌詞であるため、歌唱の際には繊細な感情の変化が求められます。待ち受ける「死」に対して悲壮的な決意を歌うのではなく、後半に行くにつれて、「クライドと一緒ならどんな運命でも構わない」という幸福すら感じているボニーの愛の強さを表現することを心がけましょう。


 

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