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【ボイトレ 歌い方】『丸の内サディスティック』 (椎名林檎)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)

【曲名】丸の内サディスティック
【アーティスト名】椎名林檎


【丸の内サディスティック 楽曲解説】

椎名林檎の大ヒットナンバー「丸の内サディスティック」。1stアルバム「無罪モラトリアム」に収録されているこの楽曲は、シングルカットをされていないにも関わらず、認知度が高く様々なアーティストにカバーもされています。

 

先ずは、歌詞の考察から始めていきましょう。
この楽曲は、歌詞の意味を深く考えずに歌っている人の方が殆どなのではないでしょうか?

メロディとリズム、言葉の語感のノリがとても良いので深い意味を考えずとも歌唱しやすいと思います。一方で、歌詞の意味を理解しながら楽曲を聴くとまた違った側面からの見え方が出来て抑揚の付け方等変化が現れるため、是非一度考えて欲しいと思います。

 

この楽曲の歌詞を考察するにあたってギターの用語が多く出てくるため、ギター経験がないと意味の分からない言葉が多いのが特徴。曲中に出てくるギター用語をチェックしていきましょう。

 

①リッケン620(リッケンバッカー620・ギター)
②マーシャル(Marshall・アンプ)
③ラット(RAT・エフェクター)
④グレッチ(GRETSCH・ギター)
以上の4個となります。

 

また「ベンジー」という名前が出てきますがこちらは椎名林檎が敬愛するBLANKY JET CITYのギターボーカル浅井健一の愛称となっています。
これらの事から、この楽曲は音楽の事を歌っているという事が少し分かってきます。さらに1つのキーワードを当てはめる事によって歌詞の意味がより分かりやすくなります。そのキーワードとは「主人公はあまり売れていないミュージシャン」。当時の丸の内線の主要駅をなぞってミュージシャンの現状や皮肉を歌った歌詞を紐解いて行きましょう。

 

1A「報酬は入社後平行線で東京は愛せど何も無い」報酬、つまりギャランティは事務所等に所属はしているが上がる事はなく東京を愛してはいるけども何かが起きる事もない。

 

1B「リッケン620頂戴 19万も持っていないお茶の水」楽器の聖地お茶の水でリッケンバッカー620が欲しいけども19万も払う事ができない。

 

1サビ「マーシャルの匂いで飛んじゃって大変さ 毎晩絶頂に達して居るだけ ラット1つを商売道具にしているさ そしたらベンジーが肺に映ってトリップ」Marshallの電源を付けた際の真空管の匂いを感じながらベンジーも使っているRAT一つだけ繋いで爆音でギターをかき鳴らす。毎晩まるで自分がベンジーになったように錯覚をしている。因みに肺はテンションが上がるのハイともかけているダブルミーニングとなっています。

 

いかがでしょうか?

ギターの用語と主人公の背景が分かるだけでこの歌詞の意味合いがかなり分かり易いものになります。2番以降はかなり皮肉な内容になっており、とても考察のしがいがあるので、是非歌詞をよく読んで意味を考えてみて下さい。


メロディとコード・リズムの兼ね合いを検証

ここからはコード進行やリズムにどの様にメロディが乗っているかをアナライズ。

 

この楽曲を歌唱するにあたって1番大事なのがこの楽曲が16ビートのシャッフル(ハーフタイムシャッフル)という事。シャッフルとは簡単に言葉で言ってしまえば3連符の中抜き。3連符のリズムがタタタとあるならばシャッフルはタータとなるという事です。タータタータとリズムをとってしまうとノリがかなり重たくなってしまうので実際は、タタータターととるのが良いです。こうする事によってノリが軽快になり疾走感のあるリズムとなりますので是非意識をして下さい。またこの楽曲では、完璧に跳ね切っておらず、かなりイーブンに近い跳ね具合となっているので注意が必要。音源を良く聴き込んで本人のタイム感を感じてみましょう。

 

Aメロからアナライズ。
楽曲のKeyはEbメジャー。コード進行はAb△7-G7-Cm7-Eb7となっています。ここで注目すべき箇所はコードが全て4和音である7thコードである事とG7そしてEb7のノンダイアトニックコード。

 

この楽曲のダーティーでオシャレな雰囲気を作り出している要因となっています。7thコードを使用する意味としてコード進行の雰囲気を変えるという理由を挙げられる事が多いですが、もう1つの大事な意味として、メロディラインに7thの音の使用が可能となるという理由があります。
実際にアナライズをしてみるとAb△7、G7の殆どが7thの音でメロディが出来ています。通常の3和音コードとの響きの違いを引き比べてみると7thの音が意識出来るようになるので、コード楽器を使用して響きの違いを感じてみましょう。またAメロではアウフタクトでメロディが入る作りとなっています。この時に小節頭を意識し過ぎてしまうとメロディの疾走感が失われる原因となってしまいます。意識すべき箇所は1つの歌い回しが終わった後の2拍目。ここの休符をしっかり意識出来るとリズムの締まりが良くなりグルーブ感のある歌唱が出来ますので必ず意識をしましょう。

 

 


Bメロに入ってからはAメロと変わり少し伸びのあるセクションとなります。

 

ここでもアウフタクトでメロディが入っていますがAメロと違い4分音符にする事によってメリハリを作りだしています。同じく、コードトーンを意識するというよりかは小節頭の音に向かって階段上にスケールを上がる作りを重視している点に注目。スケールを上下する流れは聴いてる人の耳に音の行先を想像させるのでとても耳馴染みがよくなります。

 

Aメロでは音を詰めたリズムかつ際どいメロディで、Bメロに入るとゆったりとしたリズムに耳馴染みの良いラインを。Aメロ.Bメロだけでもかなりメリハリの効いた作りになっている事に気づくでしょうか?

この楽曲では、初め歌詞というよりもリズムやメロディで抑揚の付け方を意識すると歌唱がしやすいと思います。コードとメロディ、リズムとメロディがどのように楽曲を作っているかを改めて聴いてみて下さい。

 


サビに入ってからはAメロと同じコード進行となります。

 

2小節モチーフのシンプルなメロディラインを1回し目は下げて2回し目は上げてと変化をもたらす作りになっています。ここでもコードトーンよりもスケールの流れを意識して作られているように感じます。サビでもテンションが上がり切らないようにあえてスケールをダウンさせ落ち着いた雰囲気を作り出しています。

しかし、下がっていくだけではサビ感が弱まってしまうため、2回し目でメロディを上げる事によってキャッチーにもなりサビ感が生まれてきます。
音程が下っていくメロディラインでは、下げる事に意識が向いてしまいピッチが下がり過ぎてしまう事が多いので注意が必要です。

 

さらに2回し目の下がった後のC音への跳躍も難しい箇所となっています。フラットしないように頭の中に音をイメージしながらしっかりと当てにいきましょう。他にもKeyに対するb3であるブルーノートが出てくる事、シャッフルでの細かい音程の変化が歌唱にあたって難しい箇所と思います。
下記の譜面を見て意識するべき場所を確認して下さい。また、歌い回しの取り方もかなり難しいものとなっています。頭拍からフレーズが開始するのではなく裏拍から開始する箇所が多くあるので8分音符の意識が薄いノリが悪くなったりハシリの原因となります。メトロノームなどを使い8分音符の音価を意識してリズムをとってみて下さい。

 


全体的には、歌唱し易く数回練習しただけで楽しく歌える楽曲。

一方で、細かくアナライズをしてみると完璧に歌いこなすにはかなりの難易度となっている事が分かります。先ずは全体をボヤッとで良いので覚えて自分の歌を録音しながら少しずつ細かい所まで詰めてもらえればと嬉しいです。


【声について】

椎名林檎さんは独特な発音とトゥワンギーな声質が特徴です。(鼻腔共鳴ではないので注意!)

モノマネをしようとすると無理な締め付けを起こす可能性がありますので、まずは自分の声でしっかり歌えるようにしましょう。基本的には声帯は薄く使います。慣れてきたらミックスボイスにチャレンジしてみてください。

音色のばらつきを少なくするために顎の動きを抑えてミニマムな動きで発音してみましょう。


 

 

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