ボイストレーニングコラム

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【ボイトレ 歌い方】『水平線』(back number)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)

【曲名】水平線
【アーティスト名】back number


今回は、back numberの4作目ににあたる配信デジタルシングル「水平線」を解説。

この楽曲は新型コロナウイルスの影響で中止となってしまった2020年のインターハイを目指していた高校生たちへ向けて書き下ろされた楽曲。楽曲の配信前からYoutubeのMVで注目を集め、現在では再生回数2億回を越える大ヒット曲となっています。


【歌詞の考察】
前述した通りこの楽曲はインターハイを目指していた高校生に向けて書き下ろされました。直接的な表現は無いものの、優しく・柔らかくメッセージを伝える歌詞となっています。

 

少しだけ歌詞を考察してみましょう。

 

Aメロ
できるだけ嘘は無いように
どんな時も優しくあれるように
人が痛みを感じたときには
自分のことのように思えるように

できるだけ嘘をつかず他者に寄り添える優しい人であるように。

 

Bメロ

正しさを別の正しさで
失くす悲しみにも出会うけれど

自分が正しいと思った事は他の人からみたら正しいとは限らない。
そのせいで自分の正しさが通らないときもある。

 

サビ

水平線が光る朝に
あなたの希望が崩れ落ちて
かぜに飛ばされる欠片に
誰かがきれいとつぶやいてる

目標としていたインターハイ当日、憧れの舞台は中止となってしまった。けれどそれまでの努力は決して無駄では無く誰かの心に美しく輝いている。

 

悲しい声で歌いながら
いつしか海に流れ着いて
光って
あなたはそれを見るでしょう

今は悲しみが溢れているが、いつの日かかけがえのない思い出としてあなたの中で輝くでしょう。

 

いかがでしょうか?
聴いている人に寄り添ってくれる様な優しい歌詞になってるかと思います。是非2番以降の歌詞も読んで考察をしてみましょう。


【メロディーとコード・リズムの兼ね合いを検証】
楽曲のKeyはBb BPMは72。

 

先ずはAメロからコードとメロディをアナライズ。

コード進行は
|Bb Eb|F Bb|Gm7 Dm7|Eb Fsus4 F|
とダイアトニックコードに沿った基本的な進行。コードトーンを中心にスケールを少し上がったり下がったりして元の音に戻ってくるメロディが特徴的です。Ebコードの際は6thであるCの音が中心となっていますがBbメジャースケール内の音となりますので問題はありません。注意すべき箇所はメロディよりもリズム。譜面上のリズムだけをみるとシンプルなリズムの繰り返しに見えますが、タイを使いシンコペーションをする事によってリズムに躍動感を出しています。

 

シンコペーションは最近の楽曲で多く使われる技法。タイで音を繋ぐ事によりリズムの強弱が変化します。ここではタンタタではなくタターという節の繰り返しで歌唱が出来るとリズムにグルーヴが生まれます。

 

下記譜面を見て参考にしてください。また、1小節目のメロディの始まりは比較的入り易い箇所になるかと思いますが、1小節前の4拍目でしっかりとブレスをする事によってメロディ入りが締まりますので意識をして下さい。

 


Bメロのコード進行は
|Cm7 F|Bb Gm|Cm7 Dm7|Eb Fsus4 F|

 

こちらもダイアトニックコード内に綺麗に収まっています。3小節〜4小節のコード進行はサビに向かっていく定番のコード進行。ベース音がBbからみた2nd→3rd→4th→5thと上昇する事によって期待感を生み出しています。度数を意識しながらベース音・コードを聴くことによって相対音感が養われていきます。最初は難しいと思いますが少しずつ意識をしてみましょう。

 

Bメロでのメロディの作られ方やリズムのノリは基本的にはAメロと同じになっています。ですが、Bメロ1小節目で今までと違い急激にメロディを下降させる事によって展開に変化を作り出しています。BbからFへの下降ではピッチが安定し辛くなってしまうので注意をして下さい。

 


サビのコード進行は

|Bb Eb|F D/F#|Gm7 Dm7|Eb Fsus4 F|

 

セカンダリードミナントであるDコード、さらにベース音をDの3rdにあたるF#にする事で強い進行を生み出しています。そして後半はDm7-Eb-Fsus4-Fとこちらもベース音がなだらかに上がる事により期待感を高めます。2つの上昇進行によって作られた定番かつ美しいコード進行。

 

メロディラインとしてはAメロ・Bメロの伸びのあるリズムと変わり16分音符で細かく刻んでいます。言葉数が多くなりますがスラーを意識出来ると柔らかいグルーブでの歌唱が出来ると思います。また、同じ音域を辺りを繰り返す箇所と大きく上がる又は下がる箇所の変化で波を作っている点にも注目です。

 

D音からE音まで急激に音程が下がる箇所などはピッチをしっかりと意識して下さい。2回し目の3小節目からは細かいリズムから伸びのあるリズムに変わり4小節目ではAメロ・Bメロと同様のリズムの取り方となっています。最後に伸びのあるリズムを持ってくる事によって落ち着いた雰囲気でサビを締めくくる事が出来ています。

 

 


2番が終わった後の落ちサビでは4分の5拍子が使われています。

5拍目は綺麗に4分休符となっているので簡単に思えますが完全な無音となるので少し緊張感のある箇所となります。ウンと4分で休符を感じるよりもブレスを8分裏に入れ細かくリズムを感じるのが良いと思います。

 


最後のサビでは1音転調をしKeyがC。

ここでは転調をしている事と1番と歌詞が同じという事に注目。転調をする事によって世界が拓けた雰囲気になり、より言葉が鮮明に伝わります。ここで同じ歌詞を持ってくる事により楽曲の最も伝えたい箇所が分かり、聴き手により響くようになります。楽曲の最大の山場となりますのでしっかりと歌い切って下さい。また、転調の際にコードでの示唆が無く急に1音上がる形となっています。頭の中に初めの音をしっかりと鳴らして注意深くラスサビに向かいましょう。

 

いかがでしょうか?
非常にシンプルでストレートな楽曲になっているのが良く分かると思います。シンプルでストレートだからこそダイレクトに歌唱が良し悪しを決めてしまいます。優しい歌詞、メロディラインの美しさ、1つ1つゆっくり意識しながらチャレンジして欲しい楽曲。


声について
メロディの動きが滑らかな曲ですので、細やかな音色の変化をつけられると素敵です。声帯を厚いまま息を押さないように歌いましょう。音の始まりや処理まで丁寧に歌えるよう練習が必要です。テンポはゆったりしていますが、言葉が詰まっていますので、必要以上に顎の力が入らないようにし、滑舌にもしっかり意識を向けましょう。


 

 

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