【ボイトレ 歌い方】『鬼ノ宴』 (友成空)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)
【鬼ノ宴 楽曲解説】
シンガーソングライターである友成空(ともなりそら)氏がリリースした楽曲。
2023年11月、TikTokに「鬼ノ宴」のデモをアップ。2024年1月10日の配信リリースまでに、250万再生を超える人気。
今回の楽曲はタイトルが表す通り、「鬼が宴をしている様子」を題材となっている。特に歌詞に注目してみると、歴史的仮名遣いを使った表現や、「始月曜」と書いて「はじまんでー」と読ませる表現などを使用しています。ユーモアとキャッチーさを持ち合わせもっています。
【サウンドとリズム】
今回の楽曲のジャンルは和風ポップ。イントロはベースのみで始まる、今回の楽曲。ベースのリフレイン(フレーズを繰り返すこと)が印象的な楽曲となっています。使われている楽器はベース、ドラム、パーカッション、ギター、ピアノ、シンセといった楽器構成。
ドラムに関しても、序盤はキックのパターンのみで構成されています。曲が進むにつれ、ハット等の細かいリズムが増えるような構成となっています。8分ウラを強調したシンバル(鈴のような)のフレーズも特徴的です。
クラップの音の主張が強い点や、コード進行が循環進行である点などから、主にヒップホップやジャズからの影響を受けていることが考えられます。
循環進行であるゆえに「飽きさせない手法」として、2コーラス目でジャズピアノ風のアレンジを施したり、楽器の足し算により楽曲に変化を与えるようなアレンジングをしています。転調の前のサンプル音源の掛け声など、より和風な印象を与えています。
【セクション毎のメロディ解説】
まずは全体のコード進行について考察。今回の楽曲のキーはC#m。
全体のコード進行に着目すると、「F#m7 → G#7 → C#m7 」といった流れの循環進行で成り立っています。また楽曲の後半では3回、転調が行われています。ここで使われている転調は、前触れもなく突然転調するもので、リスナーを飽きさせないための狙いがあります。
メロディのリズムは8分音符で構成されており、リズムとしてはシンプルなのですが、音程の上がり下がりが激しい箇所も出てくるので注意が必要です。それではセクション毎に考察していきましょう。
「何処から喰へば良いものか」から始まる箇所。
胸声(chest voice)の音域で構成されたフレーズとなっています。細かい注意点としては、語尾の切れ目に注意すること。同じ「か」の語尾でも、伸ばす箇所と止める箇所が存在します。どの語尾も伸ばして発音してしまうと、スピード感のないものになってしまうので気をつけましょう。
「世の中じゃ」の箇所は、5度間の上行下行フレーズとなっています。狙った音程に当てられるよう、しっかり練習しましょう。また、8分裏にアクセントがある点にも注意して歌いましょう。
「仏が何時も水を差す」の箇所。
フレーズ頭の2音目の音程に注目。C#mキーにおけるb5thの音を使用しており、Eにおけるブルーノートスケールの音とも解釈することができます。この音を使用することで、どことなく「物悲しさ・暗さ」を表現しています。半音の音程差に注意して歌いましょう。
また、サビ入り前の「あゝ」の音程にも注意。こちらはC# ハーモニックマイナースケール上のM7thの音を使用しています。鍵盤などを使用し、正しい音程を確認しておきましょう。
「あゝかっぴらけや其御口」の箇所。
サビになると、フレーズの音程がオクターブ上がります。裏声と地声の切り替えが多いので、うまく切り替えられるよう練習しましょう。また細かい箇所でこぶしと呼ばれる音を瞬時に上下させるテクニックも多用されていますので、そのニュアンスまでしっかり歌えるようにしましょう。
「アアイヤイヤイヤ」の箇所。
2番サビ終わりに突然転調した状態で歌が始まる点に注意。Key = C#m → Key = Ebm へ移調しており、全音上への転調をしています。
また、8小節終わりの折り返しで、もう一度転調が行われます。Key = Ebm → Key = Fm へ移調しており、ここでも全音上への転調。Key = Fm に転調した後は、そのままラスサビからエンディングまで向かっていきます。
歌のフレーズとしては「独特な歌い回し」が特徴的です。こぶしのテクニックが多用されているので、本家のニュアンスをしっかり聴くこと。また、リズムにおいては、16分の歌い回しが瞬間的に出てくる点にも注意しましょう。特に転調するタイミングで音を見失わぬよう、小節の変わり目には注意して歌いましょう。
【声について】
地声(Chest)と裏声(Head,Falset)が音域によってはっきりと区別しやすい曲です。声帯の厚さのコントロールの練習に良いでしょう。Aメロなどの中低音域では歌いすぎず、適度なリラックス状態で歌うとニュアンスが出しやすいです。
本家は気怠く歌っていますが、エモーショナルに歌っても素敵かもしれません。単純なメロディーだからこそ、いろんな歌い方を試してみてください。
【豆知識】
楽曲のデモが完成した時点でSNSへと公開し、後ほどフルバージョンをリリースするという流れは、同じシンガーソングライターでもあるnatori氏なども使う手法です。
SNSは、どの媒体よりも早く情報が拡散される傾向があります。「バズる」と言われるその反応の速さを有効的に利用した「SNS世代の新しいリリーススタイル」なのではないでしょうか。