ボイストレーニングコラム

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【ボイトレ 歌い方】『ビビデバ』(星街すいせい)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)

【曲名】ビビデバ
【アーティスト名】星街すいせい


【ビビデバ 楽曲解説】

 

バーチャルアイドル(VTuber)である星街すいせいが歌う楽曲。

 

作詞・作曲はボカロP/シンガーソングライターであるツミキ氏が担当。曲中のダンスが話題となり、「踊ってみた」「ダンスチャレンジ」といった動画がSNSで拡散。VTuberがリリースしたMVの中では現時点(2024/11)で最速にて1000万回再生を獲得。

 

今回の楽曲のタイトルである「ビビデバ」は、「ビビディ・バビディ・ブー」を省略した言葉。ディズニー映画「シンデレラ」でも使われた魔法の呪文で、「願えば、夢が叶う」といった意味があるそうです。MVのサビではシンデレラの姿をした星街すいせいが踊るシーンもみられます。

 

様々な解釈ができる今回の楽曲ですが、「VTuberへの偏見」や「新しさへの批判」といったものに対してのアンサーとも解釈できるのではないでしょうか。何者にも縛られない自由でポジティブな姿をこの楽曲で表現しているのかもしれません。


【サウンドとリズム】

 

BPM120というテンポ感の中で、スウィング感のあるグルーヴィーな演奏が特徴的な楽曲。

 

今回の楽曲のジャンルですが、ダンスミュージック・ファンク・ヒップホップ・ジャズなど様々なジャンルのエッセンスを交えた、ボカロミュージックとなっています。

 

イントロではヒップホップ系の楽曲で使用されるチョップ(ボーカル素材などを細かく切り刻んで再配置する手法)が使われています。ベースは主にスラップ奏法(叩くような演奏手法)やファンク系の音楽特有の16分音符を多用した細かいフレーズで構成。

 

ドラムはファンクなどで使われる「シェイクビート」(スネアのゴーストノートを裏拍で入れるビート)が主に使われています。後半のセクションでは、ファンク系の音楽でみられる「歌とビートとの掛け合い」があり、楽曲のスリリングさとカッコ良さを際立たせています。サビとなるセクションは、4つ打ちのビートになり、よりダンサブルなサウンド。

 

ホーンセクションのフレーズもサンプリング(既存楽曲のビートを録音し使用する方法)を彷彿とさせるもので、曲中でフレーズがリフレイン(繰り返し)している点も特徴の一つ。全体を通して、16分音符のフィール・切れを感じさせる歌唱を目指しましょう。


【セクション毎のメロディ解説】

 

まずは全体のコードについて考察。

Aセクションは基本的にワンコード(Bbm7)にて構成されています。ホーンセクションがメインメロディの後ろでフレーズを演奏する、ファンク系によく見られる手法。Bセクションからコードの流れが活発になっていきます。

 

基本は Ebm7→F7→Bbm7で構成されたコード進行ですが、途中、クリシェ(半音でのコード移動)と言われる手法を使って、Bbm7→Aaug→Ab→Dbといった展開を行っています。

 

サビのセクションでは、Bbm → Ebmへ転調。

この転調は完全4度、つまり「下属調への転調」。「下属調への転調」は、転調感が少なく、転調したことに気付きづらい点が特徴と言えます。メロディに関しては、特にリズムの難易度が高く、細かい歌唱テクニックも出てきます。それではセクション毎に考察していきましょう。

 

「つまらないデイズもう散々ね!」から始まる箇所。
このセクションは、音程の上下行があるラップパート。「呪術必中」の箇所の「ひ」は裏声での発声。発声の切り替えに注意が必要。同じ音程で、「I wanna be free!」の「free!」の箇所も注意しましょう。

 

「だってまだふりだし」の箇所の「ふり」の音程にも注意。Bbマイナースケールの♭9thの音で、「だし」の箇所でRootの音へと戻るフレーズです。半音の移動、かつ、低めの声域にあたります。

 

譜例を参考に丁寧に音取りを。最後の「し」(sh)もしっかりと発音するよう、心がけましょう。

 


「秒針は音を立てて」から始まる箇所。

 

このセクションからメロディパート。

 

跳躍する箇所が多用されていますので、その点を重点的にやっていきましょう。「魔物」の「の」の箇所は、音程としてはF7の構成音である、A(ラ)の音となります。下降していくフレーズですので、音程が曖昧にならないよう注意。譜例を参考に正しい音を確認して練習しましょう。

 

「思い通り」の箇所は、半音間の上行下行フレーズ。こちらも曖昧な音程にならないよう、しっかりとコントロールしましょう。

 

 


「おしゃまな馬車」から始まる箇所。

 

サビ入りの言葉から、早口言葉のような歌詞に注意。滑舌の練習も大事ですが、練習をする際はテンポを落として、言葉のリズム・歌い回しが合っているか確認をしましょう。

 

「おしゃまな馬車」の「お」は16分裏拍から始まっている点に注意。どこがアタマ拍にくる言葉なのかを意識して歌うことで、よりリズムをタイトにすることができます。

 

「飛び乗って」の箇所では音程が1オクターブ上行するフレーズ。しっかり音を当てられるよう練習しましょう。「Drivin」の箇所ではマイナーブルーススケール(マイナーペンタトニックスケールに♭5の音を追加したスケール)の♭5の音が出てきます。譜例を参考にしながら、しっかりと音取りを。

 


「我儘のまにまに」の箇所は伸ばすフレーズ、細かく切るフレーズのコントラストをしっかり表現しましょう。

 

「きらめきに」のフレーズでは「き」の音程に注意。EbメロディックマイナースケールのM6thの音となっています。「注意」の発音も「ちゅいちゅい」と発音すると良いでしょう。

 


「Bibbidi bobbidi boowa」の箇所は、8分ウラを意識。

 

後半の「boowa」の歌唱法にも注目。こちらはなだらかに(スラー)音を繋ぐように降下するフレーズとなっている点に注意して歌いましょう。「yeah」の箇所では最初の音がフラットしている点に注意。前述した、マイナーブルーススケールのフレーズが使用されています。譜例を参考にしながら、正しい音程で音を取りましょう。

 

 


2コーラス目の「Da-da-da-dance! ラリラリホ」から始まる箇所。ラップパートとなっていますので、リズム・拍の取り方に注意。

 

「Chitty Chitty bang bang」の箇所。

こちらはドラムと歌との掛け合いとなっています。ドラムを聴くことも大事ですが、自分の中でしっかりとカウントを取ることが重要です。4分音符を足や手でカウントしながら歌えるかどうか、チェックしてみると良いでしょう。

 

「灰に成る迄踊っていよう」の最後の「よう」の箇所。
こちらは音程が1オクターブ上行するフレーズとなっています。しっかりと狙った音に当てられるように。


【声について】

 

主に低音部と高音部にファルセットが使用されています。B♭4付近に向かって声の芯がしっかりと乗ってくるミックスボイスを作る必要があります。言葉がつまっているので、滑舌練習はしっかりと。舌と唇の動きをミニマムに、かつハッキリと動かしてリズム良く歌いましょう。


【豆知識】

 

今回の楽曲の作詞・作曲者であるツミキさんといえば、言葉遊び・言葉の使い方が魅力的なアーティスト。日本語を英語のような並びで羅列した、リズミカルな言葉選びが特徴。

 

「灰に成る迄踊って居よう」の箇所は聴くだけだと、英語の「High」かと思いきや、歌詞をみると「灰」という、洒落の効いた歌詞となっています。

パッと聞くと英語か日本語か分からないフレーズも、歌詞を検索してみると面白い発見がありますよ!!


 

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