【ボイトレ 歌い方】『ダーリン』 (Mrs.GREEN APPLE)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)
【曲名】ダーリン
【アーティスト名】Mrs.GREEN APPLE
日本の大人気ロックバンド、Mrs.GREEN APPLEの15作目の配信限定シングル「ダーリン」を解説。
若者の孤独や本音と向き合い書かれたという歌詞を壮大なロックバラードに乗せて届けられているこの楽曲は、NHKでの特別番組「Mrs.GREEN APPLE 18祭」のテーマソングとして書き下ろされた。
【歌詞の考察】
歌詞を書いた大森は
「対象がいて起こる感情だからこそ、孤独を歌うからこそ、誰かを歌う事に意味がある」
「1人のすごいちっさいところから始まるんだけど、それが爆発的な色んな景色に広がっていく」
とインタビューで語っている。
ダーリンという心の拠り所に向けて誰かがいて初めて産まれる孤独や不安、劣等感などをストレートに描いた歌詞になっている。ダーリンと聞くと男性の恋人を思い浮かべる事が多いと思うが、本来は「最愛の人」という意味。この楽曲では恋人、友人、家族と色々な意味合いでのダーリンを考えながら歌詞を聴いてほしい。
【メロディとコード・リズムの兼ね合いを検証】
Bpmは67。Keyは1番がBb、2番がC、ラストサビがD。
Aメロからコード進行は
|Bb/D Eb|F D7/F#|Gm7 C7/E|Eb C7 Fsus4 F7|
|Bb/D Eb|F D7/F#|Gm7 C7|Eb F Bb|
この楽曲では全体的にオンコードを多用しコード進行の流れを柔らかくしている。Aメロでは頭からD-Eb-F-F#-Gとベース音を上昇させGm7-C7/EとⅡ-Vの流れに繋げている箇所に注目。
なだらかにベース音が動きドミナントモーションに移行するとても綺麗なコード進行。また、D7やC7などではセカンダリードミナントというコード理論が使用されている。ノンダイアトニックのドミナント7thコードを作り出す事によりコード進行にドラマチックな展開を作り出している。セカンダリードミナントを使用した場合、本来ならば4度上のコードに向かうのが一般的だか、3小節目のC7/EではKeyのⅣであるEbに向かっている。
例外としてⅡ7のコードはⅣに進む事が多いため覚えておいて欲しい。
メロディとしては、Bbメジャースケールの中からコードトーンを中心に展開されているが、Eb時の#11であるCの音など少しピッチを当てるのが難しい部分がある。C7/Eに至ってはアボイドノート(不協和音になってしまうため避けなければいけない音)であるFの音が多く入ってくるので注意が必要だ。また、跳躍も多いのがこのメロディのポイント。ピッチがフラットし過ぎないないように注意をして歌唱をしたい。リズムに関しては16分音符を中心に構成され、とても細かい符割。4分のカウントをするのと同時に細かく16分音符も感じていないと上手くリズムを取れなくなってしまうので注意。
またミセスの楽曲で多くあるのが1つの音符に2つ以上の言葉が入るという点。この楽曲も例に漏れず、16分音符1つに対して2つの言葉が入る箇所が多くある。ハッキリとした発音をしないとボヤけて聴こえてしまうのでしっかりと意識をしてほしい。
Bメロのコード進行は以下
|D7/F# Gm|D7/F# Gm|Ab Eb/G|Eb C/E Eb/F F|
基本的にコード進行はKeyをハッキリさせる為にⅠ、Ⅳ、Ⅵmから始まる事が多い。だが、BメロはセカンダリードミナントによるⅢ7から始まるユニークなコード進行。
コードがノンダイアトニックかつ、ドミナント7thコードを使用する事により歌詞の世界観をより引き立たせている点に注目をしたい。4小節目でEbからセカンダリードミナントによるC/Eを経由してEb/Fに向かっている。Eb/FはF7(9.11)というコードと構成音が同じである為、ここでの機能はドミナントという事になる。単にコードの表記を分かりやすくしている。この様に構成音がベース音にならないオンコードは別のコードの表記を分かりやすくしているものが多いので是非覚えておいて欲しい。
メロディとしてはコードトーンを中心にモチーフからサビに向けての展開をしている。基本的にはコードトーンで展開される為コードの響きをしっかりと聴いておく事が重要になってくる。AbコードはBbmkeyから借用されたノンダイアトニックコードになるがここではBbメジャースケールを使用している為メロディに構成音が一切入っておらずテンションのみで構成されているので注意。
リズムはAメロと同様に16分音符を中心に細かく展開されている。16分音符裏からメロディが始まる事が多いのでこちらもしっかりと細かくリズムをとって欲しい。
サビに入ってからのコード進行
|Bb Gm7|Eb F Bb |D/F# Gm Bb/F|Eb F Bb F7(b9)|
|Bb/D F#aug Gm7 Bb7|Eb/G F/A Bb |D/F# Gm7|Cm7 F7(b9)|Bb |
サビでも同様にセカンダリードミナント、オンコードが多用。
コードの度数の進行、ベース音の流れを見てみるとこちらもとても綺麗なコード進行になっている。新しくF#augという聞きな慣れないコードが出てきているが、これはD7(b13)/F#と構成音が同じ為、セカンダリードミナントで作られたD7の展開系(音の積み重ね方を変えたコード)という事になる。また、ミセスの楽曲ではコードが1拍事に変わる展開が非常に多く使用されている。
メロディに沿ってコードを変える事によりメロディとコードの親和性が増しより美しく聴こえてくるようになる。Jpopsの楽曲ではよく使用される手法だが、ミセスの楽曲では特に使用される事が多い。メロディラインとしてはこちらもコードトーンを中心にBbメジャースケールで展開されている。サビでの最高音はGとミセスの楽曲の中では音域がそこまで高く無いサビとなっている。だが、この楽曲では1番、2番、ラストサビで全音ずつ転調をする作りになっていて、ラストサビでの最高音はBbとなっているので注意が必要。
楽曲のストーリー性を重視し、段階的に転調をする事でラストにダイナミックな展開が産まれる作りとなっている。リズムとしてはAメロやBメロと同様16分音符中心のリズムとなるが、8分音符や4分音符を使用する事により伸びやかなメロディとなっている。少し長めの音符を使用する事により言葉がゆっくりと聴こえるようになるので歌詞の内容がより聞き手に伝わるようになる。バラード調の楽曲ではよく使用されるのでコード進行の手法と共にこちらも覚えておいて欲しい。
2番に入ると前述の通りkeyが全音上のCに転調。
基本的な流れは1番と同じなのでしっかりと転調感を聴き取り歌い切って欲しい。2番サビ後にはラストサビに向かうDメロがある。
コード進行
|F C/E|Dm7 G C |F C/E |Dm7 G#dim7 Am7 C|
|F C/E |Dm7 G#dim7 Am7 C|Bb F/A Fm/Ab C/G|Dsus4 D/F#|Gsus4 Asus4|A |
ここではCmkeyからの借用であるBbそしてFm/Ab。
Gsus4に向かう為のDsus4、D/F#。
最後にはKeyDに向かう為のAsus4、Aとノンダイアトニックを多く使用し、壮大な雰囲気を作り出してラストに向け怒涛の展開を作っている。メロディラインの注意点としては最後の転調に向かうロングトーン。Gから全音ずつ上がって楽曲での最高音となるC#まで地声で歌い切っている。コードもGsus4-Asus4-Aと転調に向かう進行となる為予めコードの雰囲気をしっかりと頭に入れてイメージしながら歌唱に臨んで欲しい。
また、リズムでは32分音符を使用して細かく言葉を詰め込んでいる。32分音符を感じるにはまず16分音符をしっかりと取れる事が重要。16分を感じた上で均等に2等分出来るように練習を積み重ねて欲しい。始まりから終わりまで似た展開が無く、意識をしなければならない事が多い難しい楽曲だが、まるで一つの壮大なな物語を読んだかのように感じる素晴らしい楽曲。
是非沢山の練習を重ねてチャレンジをして欲しい。
【声について】
共鳴部、喉頭部で様々な動きが段階的に変化をしダイナミズムを形成しています。一つ一つ丁寧に動きの練習をしてください。前半の繊細な表現を保ったまま、後半のダイナミックなバンドサウンドに負けないような歌唱が必要です。声量を上げる際に、息を増やしすぎないよう注意しましょう。