ボイストレーニングコラム

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【ボイトレ 歌い方】『怪獣』 (サカナクション)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)

今回は日本の大人気ロックバンド、サカナクションの楽曲「怪獣」を解説。

 

この楽曲はTVアニメ「チ。ー地球の運動についてー」のオープニングテーマとして制作された。リリース後Spotifyに至っては1日あたりの再生回数歴代記録を更新した大ヒットナンバーとなっている。


[歌詞の考察]

先ずは歌詞の考察。

この楽曲の作詞において山口氏はインタビューで「原作のもつテーマをわかりやすく、具体的に音楽にするのではなく、いかに抽象的で説得力のあるものにするかということに重点をおいて制作しました。」と語っている。

 

実際に「天動説が主流の世界で異端とされている地動説を研究していく」という原作の内容を知っているかによって世界観、歌詞の感じ方が大きく変化する楽曲となっている為、歌唱の際にはあらすじだけでも読む事をオススメする。

 

歌詞を読み解くにあたって、前述のインタビューの通りこの楽曲では抽象的な表現が多く使用されている為、「天文学」「宇宙」そして「研究(または探究)」「異端」という幾つかのキーワードが重要。

 

歌詞の意味を考えるという工程も楽曲の1つの楽しみ方な為、是非キーワードを用いて歌詞の意味を読み解いてみて欲しい。


「メロディとコード・リズムの兼ね合いを検証」

楽曲のKeyはG#m BPMは180となっている。

 

Aメロのコード進行は

|G#m7|E△7|B/F#|D#7/G|

|G#m7|E△7|B/F#|D#7/G|

|G#m7|E△7|B/F#|D#7/G|

|G#m7|E△7|B/F#|D#7|G#m7|

となっている。

 

基本はダイアトニックコードに沿っているが4小節目のみセカンダリードミナントを使用しG#m7への解決感を強めている。またオンコードを使用してG#に向かう為2小節目からE-F#-Gと上昇している点にも注目。4小節の循環進行(コード進行が繰り返される事)とシンプルながら非常に美しい流れとなっている。

 

メロディラインはコードやスケールに沿った流れとなっているが、所々小節入りが7thの音やテンションの音から入るので注意。

 

リズムにおいては、ハーフテンポ(略してハフテンとも言う)になっている点に注目。

この楽曲のBPMは180となっているが、Aメロでは半分の90でリズムを取る必要がある。BPMの早い楽曲では展開の流れを変える為に使用される事が多い技法だ。本来なら強拍は2拍4拍だが、ハーフテンポにする事によって強拍が小節の3拍目に変化する。譜面において明記される事はないが、ノリの変化に気付けるかが非常に重要となっている。

 

 


Bメロのコード進行は

|G#m7|E△7|B|D#7|

|G#m7|E|B/F#|D#7/G|

|G#m7|E△7|B|D#7|

|G#m7|E|B/F#|D#7|

を2回繰り返す形となっている。

 

コード進行はAメロと変わりがないがオンコードや7thコードを無くして雰囲気を変えている。

 

メロディラインは8小節モチーフとなっていてこちらもスケールに沿っているが、サカナクションらしく跳躍が非常に多い展開となっているので注意が必要。代表曲でもある「ミュージック」のBメロやサビ、「新宝島」のサビなどでも多く跳躍が使用されているがこの跳躍がサカナクションらしさを担っているので是非意識をして聴いてみて欲しい。

 

リズムにおいてはAメロのハーフテンポのノリからBPM通りのノリに変化している。裏拍からメロディがスタートする事が多いのでカウントをしっかり取って裏を感じて欲しい。だが、余りにリズムがカチッとしてしまうとタイトなリズムトラックも相まって全体的に固いサウンドになってしまう為、歌唱の際はは柔らかく、しっかりとリズムを取る事が重要。

 

 


Cメロのコード進行は

|E△7|E△7|E△7|E△7|

|D#m7|D#m7|D#m7|D#m7|

|E△7|E△7|C#7/E#|C#7/E#|

|F#7sus4|F#7sus4|D#7|D#7|

 

この楽曲ではサビに向かうまでに3つのセクションがある楽曲。

注目したい場所は11小節目からのセカンダリードミナントを使用したノンダイアトニックのみの怒涛の展開。C#7/E#からF#7sus4、F#sus4からD#7、そしてD#7からサビ頭のG#m7へとドミナントモーションを繰り返し行いサビに向けて勢いをつけている。

 

メロディラインは7thの音やテンションの音が中心となり作られているので少し注意が必要。ピッチを上手く当てれるように練習を重ねて欲しい。

 

リズムとしては1度音源を聴いて欲しいのだが、4小節単位のノリの変化に気づくだろうか?

ここでは1〜4・9〜12小節目がAメロにも使用されていたハーフテンポとなっており5〜8・13〜16小節目でインテンポに復帰している。早いスパンでノリが変わっていくので切り替えが非常に難しいセクションだ。インテンポに変わった際の1拍目を意識して欲しいところだが、メロディラインが8分裏からシンコペーションをしているのでリズムを感じる事が非常に難しい箇所となっている。ハーフテンポの際に16分音符で細かくリズムを感じておけるとインテンポに戻りやすくなるので意識をして欲しい。

 

 


サビのコード進行は

|G#m7|E△7|B|F#/A#|

を繰り返す循環コードとなっている。Aメロとコード進行は似ているが4小節目にF#/A#を使用する事でAメロよりもスッキリとG#m7に循環をさせている。

 

メロディラインはスケールを階段上に上昇し期待感を高め、シンプルなモチーフを展開して最後に崩すという非常に綺麗な作りとなっている。ただ、音数が少ない為ピッチが不安定だと締まらないサビになってしまうので注意が必要。基本はコードトーンに沿ったメロディとなるのでコードをしっかりと聴きながらピッチを当てに行って欲しい。

 

リズムとしては4分音符を中心としたノビのあるリズムが中心。基本4拍目にアクセントがくる形となるのでここに意識が向かってしまうが実は3拍目が非常に重要。3拍目でしっかりと溜めを作る事によって4拍目のアクセントが活きる作りとなっている。何処の拍を意識するかによりグルーブが大きく変わってくるので注意をして歌唱に臨んでみましょう。

 

 


いかがだっただろうか?

 

サカナクションは前述した代表曲もそうだが、思わず口ずさみたくなるようなリズムや語感の良い楽曲が非常に多い。

怪獣→Bメロ ミュージック→Aメロ 新宝島→Aメロ。一見簡単そうに見えるが実は奥が深い為歌いこなすには沢山の練習が必要となる。是非細かい所まで意識をして歌唱に臨んで欲しい。


声について

全体的に声帯は厚めに使っています。必ず首や体のサポートをしっかり使って歌いましょう。

クールな印象を受けますが、実際はとてもパワフルに歌唱されています。中音域と高音に跳躍する際に音色が変わりすぎないよう注意してください。

楽曲の持つノリに合わせるため、顎はリラックスして音の切り口をリズミックに処理しましょう。


 

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