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【ボイトレ 歌い方】『だから僕は音楽を辞めた』 (ヨルシカ)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)

【だから僕は音楽を辞めた 楽曲解説】

 

コンポーザーのn-bunaとボーカルのsuisによる2人組ユニット「ヨルシカ」。
彼らの代表曲の一つであり、YouTubeで約2億回以上再生されているこの楽曲は、心の痛み・自己否定・芸術と表現に対する渇望と苦悩を描いています。

 

テンポ:♩=125 キー:E(C♯m)


1番 Aメロ

 

コード進行:A → B → C♯m

 

これはC♯マイナースケールにおけるⅥ–Ⅶ–Ⅰm進行(EメジャースケールではⅣ–Ⅴ–Ⅵm)で、邦楽ロックでよく用いられる基本的なパターンです。
ピアノとキックによるシンプルな伴奏に、同音反復を多用したペンタトニック的メロディ。音域も狭く、淡々と語りかけるような旋律が内面性や虚無感を表現しています。

 

キックの4分打ちとピアノの16分音符が、過ぎ去る日常の時間の流れを感じさせます。メロディも16分音符が中心で、粒立ちを揃えた演奏が求められますが、意識しすぎると機械的になるため注意が必要。

2番Aメロでは、ドラムに動きが加わり、日常が押し寄せてくるような印象を与えます。3番ではギターによるミュートの単音カッティングが加わります。

 


Bメロ

 

コード進行:E/G♯→ A→ Bsus4→ C♯m→ F♯m→ E/G♯→ Aadd9→ G♯5 → G♯sus4 → G♯

 

Aメロの細かいリズムとは対照的に、Bメロはロングトーンで始まり、コードチェンジもゆったり1小節ごとに行われ、伸びやかな印象を与えるでしょう。また、C♯マイナーからEメジャーへの同主調転調により、暗い雰囲気から一瞬光が差すような変化が感じられます。コードは上昇進行を2回繰り返し、4小節目から5小節目で初めてF♯mに下がると同時に、歌詞にも悲観的な表現が現れます。

 

ここで一度テンションを抑え、サビへ向かってクレッシェンドしていきましょう。最後の「G♯5 → G♯sus4 → G♯」は印象的なキメで、1番では「思い出すな」、2番では「劣等感」といったキーワードを際立たせ。特に2番の“劣等感”のブレイクでは、ベースの強いスラップが心の叫びを代弁しているようです。


サビ

 

コード進行:A → B → G♯m → C♯m

C♯マイナースケールではⅥ–Ⅶ–Ⅴm–Ⅰm、(EメジャースケールではⅣ–Ⅴ–Ⅲm–Ⅵm)

 

Aメロのコード進行を踏襲しつつも、躍動的なメロディと増えた楽器編成により、サビの歌詞が本音として際立って感じられます。

 

「まちがってるんだよ わかってないんだよ」

このフレーズは同じメロディを繰り返していますが、たたみかけるような歌い方によって、強い訴えとして表現されています。サビ前半はEメジャーによる明るい印象で感情が外へあふれ出しますが、サビ終盤ではあえて完全終止せず、再び内面へ沈んでいくような構成となっています。

 


落ちサビ

 

Aメロ同様、4分打ちのキックとピアノの流れるような16分音符が、時間の流れに取り残されたような感情を引き立てます。

 

「まちがってないだろ まちがってないよな まちがってないよな」と自問するような歌い方が聴き手の心に刺さり、次のラスサビの壮大な展開へのコントラストを強調します。


ラスサビ

 

ここでFメジャー(Dマイナー)へ半音上に転調。

 

転調によりメロディ冒頭の1拍目と3拍目がD5に上がり、より強い音で歌詞が強調されます。心の叫びとして力強く歌いたくなる場面ですが、しっかりとコントロールして歌いましょう。

 

 

「売れることこそがどうでもよかったんだ」という最後のフレーズは、最も高い音で歌われ、この曲の真の本音を伝えています。

 

最後は歌とバンドが同時に止まり、体言止めのような余韻を残しながら、「音楽をやめた」という主題を明確に伝えています。Dマイナーで終わることで、深い虚無感も表現されています。この楽曲は、シンプルなコード進行ながら、バンド全体のダイナミクスやボーカルの抑揚によって多様な表情を見せる作品。演奏や解釈次第で大きく化ける曲ですので、ぜひ挑戦してみてください。


【声について】

 

全体を通して声帯は薄く使いましょう。

 

サビに向かってクレッシェンドし力強さを出したいのですが、声帯は厚くなりすぎないよう注意が必要です。滑舌や声色、音の処理などを工夫しながら盛り上がりを作ってみましょう。

 

言葉が細かく入っていますので、発音の明瞭さは保ちつつ、唇や舌をスムーズに、かつリズミックに動かせるよう練習が必要。サビでは心の動きをより感情的に聴かせるよう、声帯の厚みを細やかに変えてみましょう。

 


 

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