ミュージカルコラム

コラムTOPに戻る

【ミュージカル曲コラム】『Perfect』四月は君の嘘 / Your Lie in April 歌い方・歌 上達法

【曲名】Perfect
【演目】四月は君の嘘 / Your Lie in April


【演目について】

 

ミュージカル「四月は君の嘘」は、新川直司による同名の人気漫画を原作としたミュージカル作品である。原作は2011年から2015年まで「月刊少年マガジン」で連載され、講談社漫画賞少年部門を受賞。アニメ化、実写映画化もされた作品で、音楽と青春をテーマに多くのファンに愛されてきた。

 

物語の舞台は現代の日本。かつて天才ピアニストとして名を馳せた少年・有馬公生は、母の死をきっかけにピアノの音が聞こえなくなり、音楽から遠ざかっていた。中学3年生になった公生の前に、自由奔放なヴァイオリニスト・宮園かをりが現れる。彼女との出会いをきっかけに、公生は再び音楽の世界へと引き戻されていく。音楽を通じて成長し、喜びや悲しみと向き合いながら、かけがえのない青春の時間を駆け抜ける若者たちの物語となっている。

 

ミュージカル版は、フランク・ワイルドホーン作曲、ケイト・ピナス作詞・脚本、ケーリー・ロックリン・パターソン歌詞翻訳という、ブロードウェイ・クリエイターと日本の若き才能が結集して制作された。2020年7月に上演予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で全日程が公演中止となった。その後、2022年に初演、2025年に再演を重ねている。2024年には、ロンドン・ウェストエンド、韓国・ソウルでも現地プロダクションで上演され、東宝が海外プロダクションに直接ライセンスして上演された日本のオリジナルミュージカルとして、初の快挙を成し遂げたといえる。


【曲について】

 

本楽曲は、ヴァイオリニスト・宮園かをりのソロナンバーで、コンクールの舞台に上がる直前のかをりの心情が歌われる。ドアの向こうから聞こえる歓声、自分の順番を待つ緊張感の中で、かをりは音楽への情熱と、完璧な演奏を届けたいという強い想いを抱いている。

 

この曲では、かをりの音楽に対する真摯な姿勢と、舞台に立つことへの高揚感が表現されている。自由奔放に見えるかをりだが、実は誰よりも音楽を愛し、演奏に全てを懸けている姿が垣間見える重要なナンバーとなっている。この曲の歌詞に登場する「君」は物語の中で、有馬公生のことであったと明かされる。物語の中で、かをりは渡亮太に好意を抱いているように振る舞っているが、実は幼い頃から憧れていたのは公生であり、彼女が音楽の道を選んだのも公生の演奏に心を動かされたからだった。しかし、かをりは自身の病気のことを知っており、公生に本当の想いを伝えることができない。この曲は、そんなかをりの秘めた想いが音楽への情熱と重なり合い、やがて物語が進むにつれて明かされていく彼女の「嘘」の伏線ともなっている重要なナンバーである。タイトルの「Perfect」には、完璧な演奏を目指す決意だけでなく、公生と共に過ごせるこの瞬間への切ない願いも込められている。


【歌唱ポイント、アプローチ】

 

この楽曲を歌う際は、かをりの二重の感情を理解することが最も重要です。表面的には音楽への情熱を歌っているように見えますが、実は公生への隠された恋心が根底に流れています。この複雑な心情を声に反映させることで、この曲の真の意味が伝わります。

 

歌い始めは、ドアの向こうの歓声に耳を澄ませるように、やや抑えたトーンでスタートすると”これから舞台に上がる緊張感”と”期待感”が入り混じった、高揚した心情を表現できます。そこから徐々にサビへ向けて、音楽への情熱が溢れ出すように、声のボリュームと感情を高めていきましょう。

 

サビで出てくる「あなた」は、実は公生へ向けているので、繊細さを意識して、言葉を丁寧に、かつ、声に温かみを含ませることで秘めた恋心を表現できます。サビの部分では、音楽への情熱と(公生へ)完璧な演奏を届けたいという想いが重なり、力強く伸びやかに歌い上げましょう。しかし、ここで注意したいのは、かをりは自分の本当の気持ちを公生に伝えることができないという切なさも抱えているということです。そのため、力強く歌いながらも、どこか切なさや儚さを声に含ませることを意識して練習しましょう。フレーズの語尾の処理をを少し柔らかくし、ブレスの位置にも注意を払うことで、言葉にできない想いを表現できます。

 

この曲は物語全体を通して重要な意味を持つナンバーです。初めて聴く観客には音楽への情熱として伝わりながら、物語の真実を知った後に振り返ると、全く違う意味に聞こえるという二重構造を持っています。そのため、両方の解釈が成り立つように、音楽への純粋な熱情と、公生への切ない想いのバランスを取りながら歌うことが大切です。


 

この記事を書いた人

モアミュージカル講師陣~MOAが誇るミュージカル俳優たちがタッグを組み、ミュージカル曲解説を制作~

講師

モアミュージカル講師陣~MOAが誇るミュージカル俳優たちがタッグを組み、ミュージカル曲解説を制作~

【経歴】
元劇団四季やミュージカル俳優などミュージカルに精通したメンバーで構成。共通していることは、全員「レ・ミゼラブル」出演経験があること。
これまでの舞台経験を活かし、商業ミュージカルを含めた歌唱指導を行っている。
【出演経験】
「レ・ミゼラブル」「Miss Saigon」「デスノート」「ピーターパン」「Into The Woods」「太平洋序曲」「ライオンキング」他多数

この記事をシェア!

PAGETOP