第2回:ボーカロイドの仕組みと歌の練習への活用法
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はじめに
アニソンやボーカロイド曲は、今やカラオケやライブでも欠かせない存在です。特に10代〜20代の学習者にとっては「歌いたい!」という動機の多くが、このジャンルから来ているのではないでしょうか。
では、そもそも ボーカロイド(VOCALOID) とは何か。どのように歌声が作られ、私たち歌い手やトレーナーにどんな関わり方ができるのか。今回はその基本を紹介していきます。
ボーカロイドとは?
VOCALOID はヤマハが開発した「歌声合成ソフト」の総称です。
歌詞とメロディを入力すると、キャラクター(初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカなど)が自動的に歌ってくれます。ポイントは、実際の人間の声を録音して「音の部品(サンプル)」に分解し、それを合成していること。つまり、歌うための楽器として「人の声をパソコンで再現している」のです。
Cubaseとボーカロイドの相性
研修でも触れられたように、CubaseはVOCALOIDと相性が非常に良いDAWです。
- Cubase内で直接VOCALOIDを立ち上げられる
- MIDIで入力した音符を、そのまま歌声として再生できる
- 打ち込みパートとボーカル合成を同じ画面で編集できる
このため、多くのボカロP(プロデューサー)や作曲家がCubaseを採用しています。
MIDIデータが歌になるまで
第1回で紹介したMIDI(音の高さや長さの設計図)。
このMIDIをボーカロイドに読み込ませ、さらに歌詞を入力することで「歌声」に変換されます。
例:
- MIDI:C4(ドの音)を4分音符で鳴らす
- 歌詞:「あ」を入力
→ ボカロが「アー」と歌ってくれる
さらに抑揚(ベロシティ)、音量(ダイナミクス)、ビブラートなどを細かく調整すれば、表現力のある歌声に仕上げることができます。
ピッチ修正とガイドメロ作成
DAWソフトには、ピッチ修正ソフト(バリオーディオ) が付属しているものが多いです。これにより、録音した人の歌声をMIDIに変換し、音程を直したり、練習用にガイドメロディを作成することが可能です。
- 生徒用のガイド音源:オリジナル曲や課題曲をMIDIからピアノ音で再生 → 正確な音程確認ができる
- カラオケ練習:オケとボーカルを分離する機能を使い、歌だけを抜き出して練習素材にする
- 採点システム理解:カラオケ機の採点原理(ピッチをMIDIと比較する仕組み)を実際に体験できる
これらは、単なる「打ち込み遊び」を超えて、歌唱指導に直接役立つツールとなります。
ボイストレーナーが関わるポイント
アニソン・ボカロ曲を習いたい生徒は、しばしば次のような課題を持ち込みます。
- 速いテンポの曲をどう歌いこなすか
- 高音が多く、喉が疲れる
- ボカロの無機質な歌い方を人間的に再現するには?
ボイストレーナー側は、こうした要望に対して「ただ歌わせる」のではなく、次のようにアプローチできます。
- リズムの分解練習:MIDIを使ってドラムだけを鳴らし、テンポに慣れる
- キー調整:Cubaseで半音下げた音源を用意 → 声質に合った高さで練習
- 表現の解釈:ボカロ独特の機械的フレーズに、ブレスや抑揚を加えて「人間らしく歌う」練習を導入
これにより、アニソン・ボカロを「好きだから歌う」から一歩進んで、 歌唱力アップにつながる教材 へと変えることができます。
おわりに
ボカロやアニソンは、単なる流行のジャンルではなく、現代の歌唱学習に欠かせない題材になっています。技術的な仕組みを知ることで、トレーナーも生徒も「なぜ歌いにくいのか」を客観的に理解でき、より効果的な練習に結びつきます。
次回(第3回)は、実際の練習メニューや、アニソン・ボカロ曲を教材として使う方法 を具体的に紹介していきます。
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