第2回 ディズニーミュージカルの世界
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“歌う物語”はどのように成立したのか ― シャーマン兄弟からディズニー・ルネサンスへ ―
ディズニー音楽は、初期の段階で「音と映像の結びつき」や「願いを歌う発想」を基本にしていました。しかし、私たちが現在イメージするような“物語を動かす歌”が明確な形を取るのは、もう少し後の時代です。
その転換を担ったのが、1960年代のシャーマン兄弟です。リチャードとロバートのシャーマン兄弟は、ディズニー作品において、音楽を単なる魅力的な要素から、物語の中心へと押し上げます。
『メリー・ポピンズ』の楽曲群は、その象徴です。これらの歌は、ただ覚えやすいだけではありません。言葉そのものがリズムとして機能し、さらに作品の価値観までを音楽として提示します。たとえば「お砂糖ひとさじで」は、楽しく家事をするための歌であると同時に、「ものの見方を変えることで世界は変わる」というメリー・ポピンズの思想をそのまま表現しています。
ここでは、歌が単なる感情表現ではなく、物語の“意味”そのものを担っていきます。
この時代を通して、ディズニーは「歌が自然に生まれる物語」という感覚を確立していきます。しかし1970年代後半から1980年代にかけて、その流れはいったん弱まります。音楽は存在していても、物語の推進力としては十分に機能していない作品が増えていきました。
この停滞を大きく覆したのが、1989年の『リトル・マーメイド』です。ここから始まるディズニー・ルネサンス期は、音楽と物語の関係が最も明確に結びついた時代といえます。
この時期に確立されたのが、いわゆる「ディズニー文法」。
主人公には満たされない思いがあり、それが歌によって提示され、その歌が物語を動かし、最後に音楽が感情の決着を与える。この一連の流れが、作品全体を支えます。
その中心にあるのが、I Want Songです。
I Want Songとは、主人公が「何を望んでいるのか」を観客に渡す歌です。この一曲によって、観客は物語の方向性を直感的に理解します。『リトル・マーメイド』の“Part of Your World”は、その最もわかりやすい例です。アリエルの願いはここで明確に示され、その後の行動すべてが、この歌によって裏付けられます。
この時代のディズニーでは、歌は装飾ではなく、物語そのものを動かすエンジンになっているのです。それこそが、私たちが「ディズニーらしい」と感じる理由のひとつと言えます。









