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【ミュージカル曲コラム】『千のナイフ』ベートーヴェン/Beethoven’s Secret 歌い方・歌 上達法

【曲名】千のナイフ
【演目】ベートーヴェン/Beethoven’s Secret


【演目について】
本作は、『エリザベート』や『モーツァルト!』などの人気作品を手掛けてきたミヒャエル・クンツェ(脚本/歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽/編曲)のコンビの作品。ウィーンのチームが創り、演出家はドイツ人、世界初演(23年1月)が韓国とあって、いろいろな国の文化や背景が反映されている。

 

クラッシック音楽史にその名を残すルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの謎に満ちた人物像とその生涯にフォーカスし、ベートーヴェンの〈愛〉をテーマに、【父からの虐待】、【弟との確執】、【貴族からの独立】、【幻聴による強迫観念】そして【叶わぬ恋】と、様々なシーンを織り交ぜたストーリーとなっている。実際にベートーヴェンが残した膨大な楽曲から、誰もが一度は耳にしたことがある「悲愴」、「月光」、「英雄」、「運命」、「田園」、「皇帝」、「エリーゼのために」、「第九」などのメロディに歌詞をつけ、旋律を再構築し、各シーンに当てはめていくというアプローチを試みたため、構想に10年以上の歳月を費やした。

 

ベートーヴェンが1812年にしたためるも相手に送ることなく、死後に発見された熱烈な恋文。“不滅の恋人”とだけ書かれたその宛先が誰であったのかについては、諸説あると言われている。その女性こそは(ウィーンの名家の出身で、慈善家として知られた)アントニー・ブレンターノだった…という仮説に基づいて制作されたミュージカル。


【曲について】
当代随一のピアニストとして、作曲家として、のちの音楽家に多大なる影響を及ぼしたベートーヴェンは、幼い頃から父の暴力と虐待の中で育ち、愛や人を信じられないまま孤独に生きていた。ある日、自分に無礼を働いた貴族たちに謝罪させようとキンスキー君主を訪ねた際、人妻であるアントニー・ブレンターノに出会う。ベートーヴェンは聴力を失い絶望に陥るが、トニーと互いに慰めあううちに、愛を信じないベートーヴェンと、一度も愛を感じたことがないトニーは、嵐のような恋愛関係におちていくことになる。

 

本楽曲は2人の秘密の関係が明るみになり、自身の子供達と引き離される恐怖とベートーヴェンへの愛の板挟みによって、トニーが2幕終盤で歌う曲である。また、本作品の他の曲はベートーヴェンが作曲した原曲を基にしているが、『千のナイフ』は唯一の完全オリジナルとして制作された。


【歌唱ポイント、アプローチ】
この楽曲は、トニ自身が抱き続けていた孤独や人生への葛藤が、ベートーヴェンとの出会いによって、晴れ渡るが故に訪れた愛の苦悩や、やがてそれが絶望へと変化していく心情が描かれています。そのため、感情の高まりを表現する様に楽曲のテンポ感が変化していきます。楽譜記載のテンポや強弱記号を意識して歌いましょう。

 

1番では、歌うよりもため息をつくように、そして息の量を多めに、かつ、語尾は伸ばしすぎないようにしましょう。また、1番ラスト「ただ待つのは 闇」は、『闇』を強く歌うことで、絶望感を強く表現できるでしょう。

 

2番の方がワンフレーズに入る言葉の数が多く、歌詞のリズムも少し変速的になるため、楽譜でリズムを確認しながら練習しましょう。また「どこまで愚かなの、希望は消えた、叶うはずがない」は、この楽曲の中で一番力強く心情を吐露する部分となります。それまでの部分と歌い方に変化をつけると良いでしょう。それ以降のサビは、さらに力強い表現で歌唱することにより、「後戻りできない絶望感が、トニに死を選ばせた」という哀しみが、悲壮に変化したことを表現できるでしょう。


 

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