【ミュージカル曲コラム】『EX-WIVES/エックス・ワイフズ』SIX(シックス) 歌い方・歌 上達法
【曲名】EX-WIVES/エックス・ワイフズ
【演目】SIX/シックス
【演目について】
16世紀のイギリス。テューダー朝の長兄の早世により、若くして王位を継承することになった弟のヘンリー8世は、在位38年間で6人との結婚を経験した。本作品は、離婚・打首・死亡・死別により別れた元妻たちが現代に蘇り、ポップ・ガールズバンドを結成。ヘンリーの妻として「誰が最も苦しんだのか」を競い合うといった設定のコンサート形式のミュージカルである。常に男性によって書かれてきた歴史の上で、女性がどう扱われてきたかに視点を置き、女性の側から物語を語る現代的なポップミュージカルに仕上がっている。
脚本・作曲・作詞は、トビー・マーロウとルーシー・モスの2人が全て手掛けていて、トビーがケンブリッジ大学在学中、授業中に「6人の妻たちによるコンサートの構想」を思いついたのをきっかけに本作品がつくられた。2017年、ケンブリッジ大学の学生により初演された後、ウエストエンドやブロードウェイでも上演されている。数々の賞にもノミネートされ、2022年にはトニー賞でオリジナル楽曲賞とミュージカル衣装デザイン賞を獲得した。日本では、2025年1月〜2月に来日キャスト版・日本キャスト版が上演される。
【曲について】
本楽曲は、本作品のオープニングナンバーでエネルギッシュなポップスソングとなっている。
ヘンリー8世の6人の妻たちの最期である「Divorced(離婚), beheaded(打首), died(死亡), divorced(離婚), beheaded(打首), survived(死別)」という言葉から始まり、それぞれの女王が自分の物語をソロで自己紹介していく構成となっている。
【歌唱ポイント、アプローチ】
ユニゾン部分は、リズムなどは特に難しくはないため、4分の4拍子に合わせて、ビートを刻むように意識して歌いましょう。
ソロパートでは6人の歌い分けが課題です。この作品では、6人の妻がそれぞれ異なったキャラクターで描かれていて、それぞれテーマになっている音楽ジャンルとモデルとなった歌手が存在しています。そのため、歌い分けを練習するにあたって、それぞれの設定を理解すると良いでしょう。
【参考:キャラクター背景を知る】
・キャサリン・オブ・アラゴン: 最初の妻・「離婚」。彼女は信心深いが、気性が激しく、誰からも無礼を許さない。テーマカラーは「金」で王族の地位の強さを表わしている。音楽ジャンルは「ラテンポップ」、ビヨンセとジェニファー・ロペスをモデルにしている。
・アン・ブーリン: 2番目の妻・打首。ヘンリー8世は彼女のためにキャサリン・オブ・アラゴンと離婚した。彼女はおっちょこちょいなバカのように見えるが、実はとても賢くて野蛮な女性である。テーマカラーは「緑」でヘンリー8世が彼女のために書いたとされる有名な曲「グリーンスリーブス」にちなんでいる。打首という死因に絡めて、チョーカーを着用しているが、Bのイニシャルがついたこのチョーカーは実際に彼女が身につけていたと伝えられている。音楽ジャンルは「ポップパンク」、リリー・アレンとアヴリル・ラヴィーンとケイト・ナッシュをモデルにしている。
・ジェーン・シーモア: ヘンリー8世がアン・ブーリンを斬首した後の3番目の妻・死亡。彼女は感受性が強く、妻の中で唯一ヘンリー8世を愛している。テーマカラーは「白」で純粋さを表現している。音楽ジャンルは「バラード」、アデルとシーアをモデルにしている。
・アンナ・オブ・クレーヴス: ジェーン・シーモアの死後の4番目の妻・離婚。彼女は自信に満ち、気負わず冷静で、歴代の妻の中で自分がおそらく一番成功したということを自覚している。テーマカラーは「赤」で彼女の強さを表現している。また、スカートではなく、ショートパンツを履いており、これはヘンリー8世との結婚を乗り越えて得た「自由」を表現している。音楽ジャンルは「ヒップホップ」、ニッキー・ミナージュとリアーナをモデルにしている。
・キャサリン・ハワード: ヘンリー8世とアンナ・オブ・クレーヴスの結婚が無効にされた後の5番目の妻・打首。彼女は冷淡な態度を装っているが、その裏には男性に利用されてきた生涯に深く傷ついた若い女性の姿がある。テーマカラーは「ピンク」で若い女性を表わしている。また、衣装にはシースルーの部分が施されており、これは男性が彼女の外見のみを見ていたことを示している。打首という死因に絡めて、チョーカーを着用している。音楽ジャンルは「バブルガムポップ」、マイリー・サイラスとブリトニー・スピアーズとアリアナ・グランデをモデルにしている。
・キャサリン・パー: ヘンリー8世がキャサリン・ハワードを斬首した後の6番目の妻・死別。彼女は繊細で賢く、女性同士が競い合うという考えが実はかなり退行的であると認識している。テーマカラーは「青」で彼女の知性を表現している。スカートではなくジャンプスーツを着用しており、彼女のフェミニストとしての姿勢や行動力を示している。音楽ジャンルは「R&B」、アリシア・キーズとエミリー・サンデーをモデルにしている。