【ミュージカル曲コラム】『Dead Mom』ビートルジュース / Beetle Juice 歌い方・歌 上達法
【曲名】Dead Mom
【演目】ビートルジュース / Beetle Juice
【演目について】
本作は、「チャーリーとチョコレート工場」や「スウィーニー・トッド」で知られるティム・バートン監督の1988年の映画作品を原作とし、スコット・ブラウン&アンソニー・キングが脚本、エディ・パーフェクトが作曲・作詞を担当したブロードウェイ・ミュージカル。 2019年にブロードウェイで初演、同年のトニー賞には作品賞・脚本賞・音楽賞をはじめ8部門にノミネートされた。日本では、2023年にジェシー(SixTONES)が主演、福田雄一が演出で初上演され、2025年に再演されている。さらに、2024年はティム・バートン監督がその35年後を描いた続編映画「ビートルジュース ビートルジュース」が公開され、ブロードウェイではコロナ禍を経て2022年に再演、2025年の秋から再々演が予定され、全世界から愛されている作品といえる。
物語は、不慮の事故で亡くなり幽霊となったアダムとバーバラ夫婦の家に、父と継母と過ごすリディア一家が引っ越してきたところから始まる。アダムとバーバラ夫婦は、リディア一家を追い出すために死後の世界の厄介者であるビートルジュースの力を借りることにしたが、幽霊が見えるリディアは次第に彼らと心を通わせていく。一方で、ビートルジュースは死者と対話できるリディアに目をつけ、彼女を利用して生者の世界に復活しようと暴走する中で、リディアが亡き母への思い・今の家族への葛藤・自分自身の成長と向きあっていくストーリーとなっている。
【曲について】
本楽曲は、第1幕冒頭のリディアの初のソロ曲であり、ロックの要素が盛り込まれた力強いナンバーで、母の死を乗り越えられていないリディアが、死後の世界からのサインや返事を期待するかのように、亡き母へ歌いかける楽曲となっている。唯一の理解者であった母親を失ったことによるアイデンティティーの喪失や、父親が前に進んでいることに対しての反抗心がよく表現されている。
また本楽曲は、リディア自身が死後の世界や幽霊と対話することに抵抗がないことも暗に示しており、今後のストーリーの展開を円滑にする役割も担っている。
【歌唱ポイント、アプローチ】
この楽曲は、母の死を乗り越えられないリディアの様々な感情が交錯する様子が表現され、ティーンエイジャーらしい弱さや力強さを感じられるナンバーです。そのため、まずは歌詞の意味を深く読み込み、リディアの悲しみや脆弱性、怒りや混乱などが自然と歌唱に表現されることを目標に練習しましょう。全体を通して、胸のうちに秘めていた想いが湧き上がる感情へと移行していくような流れを意識し、終盤では心の叫びを歌に表わす為に、力強く高音域が出せると良いです。また、過度なビブラートなども避けましょう。
また、リズムに乗ることで「怒り・願い・悲しみ」など複雑な感情がより伝わります。ただ上手に歌うのではなく、ビートに気持ちを乗せることがこの曲の“ノリ”の真髄です。
曲の冒頭では、亡くなった母親に問いかけるところから始まりますが、すぐそばにいる母親に話しかけるようなトーンで始め、歌い過ぎないことを意識しましょう。そこから自分の悲しみとは打って変わって、前へ進んでいる父親への混乱や怒りを表現するように歌詞にメリハリをつけていくと良いです。バラード調のパートでは、怒りよりもリディアの弱さを表現するように、フレーズを流れるように歌うと、終盤の盛り上がりとの差が表現できます。バラード調から終盤へ移行する際は、母親からの返事を「懇願」から「要求」に変化させることを意識するとイメージが湧きやすいです。