【ミュージカル曲コラム】『偽善者と呼ばれても』ゴースト&レディ 歌い方・歌 上達法
【曲名】偽善者と呼ばれても
【演目】ゴースト&レディ
【演目について】
ゴースト&レディは、劇団四季が「日本から世界に通用するミュージカル作品を作る」という目標を設定して企画した作品の第二弾である。
(第一弾は『バケモノの子』)『うしおととら』や『からくりサーカス』などのヒット作で知られる藤田和日郎氏のコミック『黒博物館 ゴースト アンド レディ』が原作で、忠実を織り交ぜながら描かれている。青年誌に連載された漫画を基のミュージカル制作は、劇団四季の試みとしては今回が初となり、演出にはミュージカル『ノートルダムの鐘』や『チック、チック…ブーン!』(アウター・クリティックス・サークル賞でオフ・ブロードウェイ・ミュージカル作品賞を受賞、ドラマ・デスク賞でミュージカル部門演出賞にノミネート)を手掛けたスコット・シュワルツ氏を招いた。また、作曲・編曲は劇団四季『バケモノの子』も担当した富貴晴美氏、脚本・歌詞はディズニーの『アナと雪の女王』の和訳を手がけた高橋知伽江氏が担当している。
時は19世紀。ロンドンのドルーリー・レーン劇場には、灰色の服を着た男=グレイと呼ばれるシアター・ゴーストがいた。グレイはある裏切りによって命を落とした元決闘代理人である。生前から芝居をこよなく愛し、ゴーストとなった今も劇場に通う日々を送っており、彼が客席に現れる芝居は必ず成功すると囁かれていた。ある日、グレイの前にひとりの令嬢が現れ「私を殺してほしい」と懇願する。彼女の名はフローレンス・ナイチンゲール(フロー)。恵まれた家庭で育てられたフローは人々を助ける看護の道に進みたいと願うが、家族の強い反対で生きる意味を失い、自らの死を望んでいた。彼女の願いを最初は拒むグレイだったが、フローが“絶望”の底に落ちた時に殺すことを条件に、共にクリミア戦争の野戦病院へと赴く。
生きる意味を見出し、それをまっとうしていくフローと、孤独な過去を持つグレイの2人が、互いに人生を照らし合っていく軌跡や強い魂の絆を描く作品となっている。
【曲について】
本楽曲は、第二幕でフロー、グレイ、デオン、ホールの4人によって歌われる重要なナンバーである。クリミア戦争の野戦病院で献身的な看護活動を続けるフローだが、その活動は必ずしも理解されず、時には「偽善者」という心ない言葉を浴びせられることもあった。
この4重奏では、それぞれの登場人物が異なる視点から「偽善者」という言葉や、自らの信念について歌う。フローにとっては、批判や中傷に直面しながらも看護という使命を貫こうとする強い意志の表明となる。グレイはフローを守り支える立場から、デオンは幽霊としての自らの存在と栄光ある死への渇望から、ホールは保身と逆恨みの感情から、それぞれの想いが交錯する。4人の異なる立場と感情が同時に展開されることで、物語のクライマックスへ向けての緊張感が高まる楽曲となっている。
【歌唱ポイント、アプローチ】
この楽曲は、4人によるアンサンブルナンバーであるため、まず全体のバランスを意識することが重要です。それぞれのパートが独立した感情を持ちながらも、一つの楽曲として調和する必要があります。
フローのパートでは、周囲からの批判や誤解に傷つきながらも、自分の信念を曲げない強さを表現しましょう。声に芯を持たせながら、温かみを失わないことが大切です。「偽善者と呼ばれても」という言葉を歌う際は、痛みを受け止めつつも、それを乗り越える覚悟を込めて力強く歌い上げます。
グレイのパートでは、フローを守りたいという想いと、幽霊であるがゆえに彼女を完全には守れない葛藤を表現しましょう。低音域を活かしながら、深い愛情を声に乗せることが重要です。
デオンのパートでは、フローへの複雑な感情”憧れ&自らの終わりを求める想い”を表現します。気高さと切なさの両方を声色に含ませることを意識しましょう。
ホールのパートでは、保身や逆恨みの感情を表現しますが、単なる悪役として歌うのではなく、彼なりの正当性や恐れを感じさせることで、キャラクターに深みが出ます。
4人が同時に歌う部分では、それぞれの感情が交錯しながらも、全体として一つの音楽的なクライマックスを作り上げることを意識しましょう。他のパートの歌声を聴きながら、自分のパートがどのように全体に貢献しているかを理解することが大切です。ハーモニーのバランスを保ちつつ、各々の感情の強さを失わないように歌うことで、この楽曲の持つドラマティックな力が最大限に発揮されます。
4人の異なる想いが一つの瞬間に凝縮される、この作品のクライマックスを表現するために、全体を通して、ブレスの位置を揃えることや、テンポ感を共有するように練習すること重要です。
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