【ボイトレ 歌い方】『怪獣の花唄』(Vaundy)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)
【曲名】怪獣の花唄
【アーティスト名】Vaundy
今回は広い世代から大人気のシンガーソングライター「Vaundy」の楽曲「怪獣の花唄」を解説。
この楽曲はVaundyの1作目のアルバム「strobo」の収録曲で配信限定シングルとしてもリリースされています。Vaundyといえば「東京フラッシュ」「不可幸力」というR&BやHip Hop調の曲のイメージが強い一方で、「怪獣の花唄」はロックを全面に押し出した楽曲。
まずは、少しだけ歌詞の考察。
この楽曲では分かりやすい言葉とは裏腹に明確な答えが歌詞の中に無い楽曲となっています。冒頭の「君」やサビに登場する「怪獣」とは一体誰を指しているのかが分からないので様々な解釈をする事ができます。数々、散りばめられたキーワードを一つ一つ繋げる事によってぼんやりと歌詞の世界観が鮮明になっていきます。
「怪獣の唄を歌う君の事を思い出し口づさんでしまう主人公」
これだけを聞くと「君」とは友人の事と思えてきますが、Vaundy本人は「怪獣の花唄と怪獣の唄は別のもの」と本人のSNSで解答しています。作中の「主人公が口づさんでいる」という事を「怪獣の花唄」と考えると「主人公=怪獣」と解釈する事が出来ます。つまり、「怪獣の唄」とは「過去の主人公(怪獣)が歌っている唄」という事になります。
そして、もう一つのキーポイントがロック調の楽曲。
ロックの歴史を辿っていくと「初期衝動」という言葉に必ず辿りつきます。
「過去」「怪獣」「初期衝動」
この言葉から無邪気だった幼い頃の自分というものが連想出来ないでしょうか?
この楽曲は無邪気だった幼き頃の事を思い出しノスタルジックな気持ちになっている主人公を描いた歌詞と感じる事が出来ます。1度歌詞をじっくりと読みながら楽曲を聴いてみましょう。
メロディとコードの兼ね合いを検証。
ここからはメロディとコードをアナライズしていきます。
まずはAメロ。
コード進行はG69ーDadd9/F#ーDmadd9-FーDadd9/F#。コード進行のキーポイントとしてオンコードを使いベースラインをなめらかに移動させている点。サブドミナントマイナーによるDm/Fのコードを使用し、前述したノスタルジックな雰囲気を上手く作り出したコード進行です。またギターの演奏、はベース音以外の音を固定したアルペジオとなっているのでベース音に注目出来るとピッチが安定し易くなります。
1小節目Gと3小節目D/F#のコードの際のメロディラインは全く同じ。難しいのは言葉の終わり際です。楽譜では音が記載されていますが、実際はラップのように音は特定されていません。わざとらしくならず、カッコよく落としましょう。Dm/Fのコードでは始まりの音がコードに対し9thの音となっているので音が取り辛い箇所となっています。前のメロディから音が全音上がるイメージをしっかりもっておけるとここはクリアし易くなりますので意識して下さい。
Bメロに入ってからは、ベースラインを上昇させてサビへの期待感を高める定番コード進行。似たようなリズムとメロディを繰り返し使用し歌詞を主語述語に分けている点にも注目です。言葉の分け目に気付く事が出来るとグルーブが感じ易くなります。Bメロはリズムとメロディの兼ね合いを良くする事に意識を置いている分コードを聴くだけでは音程がかなり取り辛いので注意が必要です。
最初のEm7では9thの音から始まり途中では11thが中心。また次のD/F#では9thの音が頻出し1オクターブの跳躍もあり、歌唱をする際1番ピッチがフワッとしてしまい易いセクションとなっています。しかし、この多く出てくるテンションノートがこの楽曲の雰囲気を作り出している要となっているので何度も繰り返し練習を重ねて下さい。
サビに入ってからは定番のコード進行に分かりやすいメロディ。コードはGーAーBm7ーD/F#となっていてJ-popsの定番Ⅳ-Ⅴ-Ⅲm-Ⅵmを少しアレンジした進行。最後のⅥmをⅠ/ⅢのD/F#にする事でメジャー調の開けた雰囲気を作り出しオンコードにより次のコードへ繋いでいます。メロディラインはDの音からスケールを上昇し期待感を高める流れになっていくのですが、Aまで上昇した後1度Dまで下がりHiC#-HiDとかなり跳躍が激しく高い音程まで向かいますので音程のイメージをしっかり持ち歌い切りましょう。
4小節目のD/F#ではスケールに対するb3の音、ブルーノートが出てきています。歌詞の「まだ消えない」と感情の強まる箇所で使用する事により気持ちを強調する作りとなっています。
Dメロはサビと同じコード進行になるのですが休符を使って急ブレーキを掛けるように歯切れの良いリズム。4つ打ちのバスドラムを良く聴きノリ感をしっかりと感じて下さい。
ラストサビが終わってからのアウトロ1は観客とシンガロング出来るようなパート。ここでの歌詞は主人公の願望が強く出ている部分でもあり感情の込め易い箇所です。しかし、1小節目ではコードに対する9thの音がキープされ2小節目では11thを中心に3小節目ではb7がキープされるという作りになっている為感情のまま歌い切ってしまうとピッチが不安定になり易い為注意をしてください。
アウトロ2ではDメロの歌詞とメロディを再度使用して内容を強調するセクション。Dメロの時とはドラムのリズムパターンが変わってくるので歌唱の際リズムは同じですが感じ方が変わってきます。ドラムやを良く聴きグループの違いを感じてみましょう。
全体的に9thや11thのメロディラインが多く跳躍も激しい楽曲となっているので簡単に歌いこなすのは難しい楽曲。テンションの作り出す雰囲気等を耳で感じ取れるように意識をしたり跳躍の安定感を練習する事でさらなるステップアップに臨める楽曲でもあります。
是非チャレンジをしてみて下さい。
声について
マルチな才能を発揮するVaundyらしく、レコーディングでの歌唱と、ライブでの歌唱が大きく異なります。言葉の発音自体もライブではより英語っぽいサウンドを使用しています。
舌と唇の動きによって、発音にかなりの変化をもたらすことが出来ますので、いろんなサウンドが出せるように研究してみてください。パワフルな箇所でも息を押さずに歌えるように練習しましょう。