【ボイトレ 歌い方】『唱』 (Ado)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)
【曲名】唱
【アーティスト名】Ado
【唱 楽曲解説】
歌い手である「Ado」がリリースした楽曲。
作詞にはTOPHAMHAT-KYO、作曲・編曲にはGigaとTeddyLoid。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで行われたハロウィンイベント、「ハロウィーン・ホラー・ナイト」とのコラボ楽曲でもあります。2023年には紅白歌合戦にも出場し、「うっせぇわ」「新時代」に次ぐ新たなAdoの首位獲得曲として、注目を集めています。ハロウィンのコラボ曲ということで、インド風のサウンドを取り入れたエキゾチックな雰囲気と根底にある海外寄りのサウンドのダンスミュージックは、作編を担当した2人のタッグが得意とするワールドワイドなジャンルのアプローチとなっています。
【サウンドとリズム】
全体的な特徴として、インド音楽風のサウンド。
インド音楽で使用される楽器のシタール、サロードなどを使用して、インド風のメロディラインを多用することで、エキゾチックな楽曲となっています。楽曲のセクション毎にリズムパターンが変わりますが、基本はEDM(エレクトロニックダンスミュージック)やHipHopの要素で構成されています。歌とキック(4つ打ち)とシンセベースのみのセクション、歌とパーカッションソロのみのセクション、などラップをより際立たせるリズミックなトラックとなっています。
後半にはHiphopの中でも流行しているトラップ系(ハットの連続音、重低音を強調したビート)のアレンジも使用されています。ボーカルパートは全体を通して細かい符割りが多く、歌の難易度も高いです。リズムの落ちつくところ、休符、言葉のキレ、一言一句の細かいニュアンスをしっかり捉えて、注意深く練習していきましょう。
【セクション毎のメロディ解説】
まずは全体のコード進行について考察。
今回の楽曲のキーはEbm。
Aメロ部分などで出てくるコード Bb は、メロディックマイナー上にできるダイアトニックコードとなっています。メロディと相まって、インド風でエキゾチックな雰囲気を演出しています。
曲中に出てくるメインフレーズの際のコード進行は2パターン。
[ CbM7 – Abm7 – Ebm ] (ⅥM7 – Ⅳm7 -Ⅰm)というパターンと、[ Ebm – Db – Cb – Db ] (Ⅰm – Ⅶ – Ⅵ – Ⅶ)というパターンとなっています。
前者の方がトラップ系のトラックで語り口調のRapが出てくる際のコードパターン、後者の方が4つ打ちのメロディックでダンサブルなパターンとなっています。歌のメロディに関してですが、Adoさんご本人も「過去1難しい楽曲」とおっしゃるほどの高難易度の楽曲。作曲者のGigaさん自身が仮歌(本番の録音前の歌唱)を歌っていたとのことで、英語のような歌い回しをイメージさせるフレーズが多いです。様々な歌い回しと言葉が敷き詰められていますので、大事なポイントをしっかり抑えていきましょう。
「Nah Nah – Nah Nah Nah , Ready for my show」の箇所。2回目のNah の後は16分音符のスタッカート(歯切れよく)で歌うのがポイント。
「なーなーいななーな」という風に歌うとよいでしょう。「Ready for my show」のフレーズは、マイナースケールの上昇フレーズとなります。余談ですが、こちらの箇所はB’zの代表曲でもある「ultra soul」のオマージュだと思われます。聞き馴染みのある響きでみんなで合唱したくなるフレーズですね!
リードメロが流れながらの「振り切ろう」の箇所。
こちらは英語の「Freak it Low」と英語の発音っぽく歌うのがポイント。
「ヤーヤーヤーヤーヤー 唱タイム」の箇所。
こちらは下降するクロマチック(半音階)フレーズとなっています。音源を聴くと流れるようにサラッと歌い上げていますが、しっかりと音程感を出すことを意識して歌いましょう。
「天辺の御成り ほらおいで」の箇所。
2小節目のメロディの箇所では、メロディックマイナースケール(ⅠⅡ bⅢ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ)の音が出てくる点に注意。今回のキーでは、レとドの音の♭(フラット)が臨時記号♮(ナチュラル)に変わります。ちなみに「brah brah brah!」は日本語で「なんとかかんとか…」という意味合いで使われる表現。音楽だと主にヒップホップ系のアーティストが多用するイメージですね。
「全土絢爛豪華 attention 騒ごうか」からの箇所。
4小節毎に声色の使い分けをすることがポイント。Rap特有の韻を踏む表現(Rap用語で「rhyme(ライム)」)が多用されています。また前半は語尾を上げる(ヒーカップ唱法)ように、後半は語尾を下げるように歌われている点もポイントです。
もう伽藍洞(がらんどう)は」からの箇所。
1小節毎に音程が上がっていき、最後は1オクターブ上に音飛びする箇所が出てきます。地声〜裏声の発声の切り替えに注意して歌いましょう。
その後、色気を意識して歌う「格好つけてる」の箇所から、力強く歌う「宣う断頭台の上で」の箇所を経て、「Nah Nah – Nah Nah Nah , Ready for my show」へと向かいます。
2番Aメロはヒップホップ色の強い展開からスタートします。特徴的なのが、4小節のまとまりで歌の符割り+声色が変化していきます。注意する点として、ただ歌詞だけをみて歌うのではなく、言葉の発音の仕方、息を吸うタイミング、アクセントや休符、語尾の上がり下がりに注目してAdoさんの歌い方を分析してみましょう。
「蛇腹刃蛇尾 騙る二枚刃」の箇所。
インド音楽で使用されるタブラのパーカッションが鳴る中、パッセージの細かいフレーズが続きます。音飛びと合わせて、シンコペーションする符割りとなっています。
「たぶらかすな かっとなっちゃ嫌」の箇所。
こちらは譜面の青マルで囲ってある箇所でリズムのアクセントを意識しましょう。発声に関してはアクセントの箇所はHead Voice(裏声)、それ以外の箇所はChest Voice(地声)に切り替わる点にも注意。音程とリズムを取るのが難しい箇所ですので、譜面を参考にしながら繰り返し練習しましょう。
「十色のバタフライ」の箇所。
メロディの最後で、マイナーキーからメジャーキーへと部分転調(Ebm – Eb)します。ここも音をしっかり当てられるよう、コードの流れを意識して歌えるようにしましょう。
全体を通して、かなり難易度の高い楽曲ですので、上記の箇所や分析するポイントを意識して、1曲通して歌い切る(かなり難しいのでは??)ことができるよう、練習してみてください!
【声について】
たくさんの声種を駆使して歌われています。
テンポも早いため、声帯筋や喉頭位置などを素早く変化させられるように、音階練習に跳躍型を取り入れてトレーニングが必要。
細やかな変化をさせるため、息の量を増やしすぎないように、体をしっかり使いましょう。声に変化をつけるために、思い切って大袈裟だと思うくらい振り切った声色を使って歌ってみることも大事。実際に、全てのパートを1人で歌い切ると不自然になります。コールアンドレスポンス(かけ合い)をイメージして、歌うパートを選んで歌うことも工夫してみましょう。
【豆知識】
今回の楽曲サウンドの一番の特徴でもある、インド風のサウンド。
POPSの世界でインド音楽をいち早く取り入れたアーティストは、「The Beatles」だと言われています。彼らの楽曲「ノルウェーの森」でもシタールのサウンドを聴くことができます!世界の様々な音楽からインスピレーションを受けることで、新たな音楽が生まれる。海外からも注目されるAdoさん、今後の音楽活動にも注目です!