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【ボイトレ 歌い方】『最後の雨』 (中西保志)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)

今回は中西保志により1992年にリリースされた名曲「最後の雨」を解説。

 

この楽曲はカラオケランキングにおいて2025年11月時点で通算478週(約9年)TOP50入りを記録している。また、アーティストによるカバーもとても多く、リリースから30年以上経った現在でも数多くの人に愛される楽曲。

 

1980年代にブームとなったジャンル「AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック」を汲み込んだバラードとなっており、中西保志氏の歌唱力、切ない別れの歌詞、どれをとっても素晴らしい楽曲となっている。


[歌詞の考察]

 

この楽曲の歌詞は恋人との別れをテーマとし、情景が浮かぶ描かれ方をしている。

ヒット曲には共感を生みやすい歌詞が多くあるが、「最後の雨」では歌詞を読んだ際に、ドラマや映画のワンシーンに入り込ませる言葉選びをしている点に注目をして欲しい。

 

1番ではAメロとBメロを使って情景をイメージさせ、サビで主人公の心情を説明。情景のイメージがしっかりと定着している為、聴衆は楽曲の世界感に入り込みサビでの主人公の心情をまるで自分の気持ちの様に感じる事が出来る。メロディ、アレンジの素晴らしさも勿論だが、歌詞もこの楽曲が大ヒットを記録した一つの大きな要因となっている。


[メロディとコード・リズムの兼ね合いを検証]

 

BPMは72。Key=Eとなっている。

 

「Intro」コード進行

|E  A/C#|B7/D#  E|

|C#m7 F#m7|B7(9)|

 

エレクトリックピアノ(エレピ)がメインとなる4小節のイントロ。シンプルなモチーフだが、この楽曲を印象付けるにあたって素晴らしいフレーズとなっている。また、シンセサイザーやエレピ、に空間を広くて感じるエフェクト(コーラス・リバーブ)を掛けたサウンドがAORらしさを作り出している。


「Aメロ」コード進行

|Eadd9  |B/D#  |A/C#  |Am/C|

|Eadd9  |B/D#  |A/C#  |F#m7  B B/A|

 

Aメロではオンコードを多用しコードの流れをなだらかに繋げている。また、1度であるEのコードをEadd9にする事によって雰囲気に透明感が足されている。この楽曲の煌びやかで優しく、柔らかい雰囲気を作り出している要因となるので注目。

 

また、Am/Cのみノンダイアトニックコード。これはモーダルインターチェンジと言われるコード理論を使用して作り出されるコード。同主調であるKey=Emからの借用になる為4小節目に寂しげな雰囲気になる感覚を感じて欲しい。

 

メロディラインとしては、Eメジャースケールを基本として綺麗に作られている。2小節B/D#ではBの音に向かう為にA#の音からクロマチックアプローチをしているので注意が必要。発音自体は弱いのだが、原曲を良く聴いてみるとリズムもピッチも綺麗にハマっている。

 

また、リズムのノリとして、フレーズの開始位置に注意をしたい。基本的には頭拍ではなく、全てアウフタクトで始まると考えれるとノリが出てくるだろう。下記譜面を見て開始位置を参考にしてほしい。

 

 


「Bメロ」コード進行

|G#m7  |C#m7  |

|F#m7  E/G#|F#m7 F#m7/B|B|

 

Bメロでは5.小節間のシンプルなコード進行となっているが、3.4小節目で定番の上昇進行に代理コードを使用して、期待感を保ちつつ落ち着いた雰囲気を作り出している点に注目。

 

本来の上昇進行は楽曲のKeyに対して

ⅡmーⅢmーⅣーⅤとなっている。

 

これをこの楽曲のkeyであるEにすると

F#mーG#mーAーBになる。

 

ここではまず、F#mを7thコードにする事でお洒落な雰囲気を作り出している。次にG#m7の代理コードとなるEを使用する事に加えてベース音を上昇させる為、E/G#を選択している。そして、Aの代理コードであるF#m7、B7(9.11)の言い換えであるF#m7/Bを使用してストレートにサビに向かうのではなく、透明感が溢れてくるように向かっている。一見シンプルに見えるコード進行だが、実はとても凝られた4小節間となっているので是非コードのサウンドを意識して聴いて欲しい。

 

メロディラインとしては

前半2小節で1つのモチーフを簡潔させ、後半2小節でサビに繋がる展開を作っている。

 

注目したいのはコード進行と同様3.4小節目。F#m7でラインを上昇させ、E/G#で下降をし少し落ち着きを持たせる。そして、4小節目で再度上昇し、サビに繋げる流れとなっている。5小節という短いBメロとなっているが非常に美しく完璧と言っても過言ではないセクション。

 

また、5小節目では拍子が4分の2拍子となるが、1拍目はブレイク(無音になる箇所)となっている。このブレイクが非常に秀逸で、4小節間で高めた期待感を1度カットする事により途轍もない緊張間が生まれているのを感じるだろうか?

 

サビに入り先程の強烈な緊張感が緩和する事によってサビの世界感に没入させるアレンジとなっている。是非目を閉じて楽曲を聴き、サビ前の緊張と緩和を楽しんで欲しい。

 


「サビ」コード進行

|A△7  B/A|G#m7  C#m7|

|F#m7 F#m7/B|E   Bm7 E7|

|A△7  B/A|G#m7  C#m7|

|F#m7   |F#m7/B     B|E   |

 

サビではⅣーⅤーⅢmーⅥmからなるJpops進行を中心に展開されている。

 

この進行のVをB/Aにする事によりAORサウンドを作り出しているので押さえておきたい。

 

ノンダイアトニックコードとしては4小節目のBm7とE7。

続くA△7への進行を強くする為にⅡmーⅤ7を作り出している。

コード理論では、Ⅱmを作り出す事をリレイテッドツー(rillⅡ)、V7を作り出す事をセカンダリードミナントと言うので覚えておこう。

 

メロディラインとしては

2小節のモチーフを前半に使用し、後半ではそのモチーフに応えるようにメロディが作られている。また、1、2拍目では16分音符、3、4拍目では8分音符を中心にメロディが構成されている点にも注目をしたい。1小節の中でリズムによるダイナミクスが大きく生じている為、聴き手にはメロディラインとしての緊張と緩和が生まれている。サビでのメロディがとても心地良く感じる大きな要因となっている。

 

この楽曲ではシンコペーションが全体的に多く使用されているが、原曲を聴いてみるとタイで伸びた先の音符までしっかりとリズムで聴こえている。シンコペーションした先の余韻をどう歌唱するかによって歌の聴こえ方がかなり変わる楽曲となっている為意識をして欲しい。

 


「間奏」コード進行

|C  D  |E    |C  D  |E  F#m7|

|C  D  |E    |C  D  |E  F#m7|

 

この楽曲では間奏も外せないセクションの1つとなっている。

Aメロでも使用されていたモーダルインターチェンジによってKey=EmからC.Dのコードを借用し、ドラマティックな展開を作り出している。主人公と恋人の日々を思い起こさせるような優しくムーディだが、情熱的なギターソロは必聴。

 

いかがだっただろうか。

この楽曲は細かいメロディの流れやリズムがしっかりとハマっていないとだらし無く聴こえてしまう。さらに、抑揚まで意識をしなければならない為、非常に難易度の高い楽曲となっている。原曲をしっかりと聴き込み言葉の切り方、発音の強弱まで意識をして歌唱に臨んで欲しい。

 


声について

 

ダイナミックな抑揚を必要とする楽曲ですので、声量やニュアンすによって声帯と息の使い方を安定させましょう。声帯まわりだけでなく、腹式呼吸や体の支えを見直してみてください。サビの高音域では迫力のある声が聞かせどころですが、決して息が多くならないよう注意してください。


 

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