第1回:パソコンで広がる音楽の世界 ― DTMとアニソン・ボカロの入り口
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はじめに
近年、音楽制作の現場は大きく変わりました。かつてはレコーディングスタジオや高価な機材が必須だった時代もありましたが、今ではパソコン1台があれば、自宅でプロ顔負けの楽曲制作が可能です。その中心にあるのが DTM(デスクトップ・ミュージック)。そして、アニソンやボーカロイド曲は、このDTM文化の広がりとともに、多くの人にとって身近な存在になってきました。
本記事では、ボイストレーナー向けに研修された内容をもとに、生徒さんや音楽好きの方へ分かりやすくお伝えします。まず第1回では、DTMの基本と、アニソンやボカロ楽曲に触れるための第一歩を解説します。
DTMとDAWって何?
「DTM」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。これは Desktop Music の略で、「パソコンを使って音楽を作ること」そのものを指します。その中で中心となるのが DAW(Digital Audio Workstation) と呼ばれるソフトウェアです。
WordやExcelのように、音楽制作用に特化した「アプリ」と考えると分かりやすいでしょう。
代表的なDAWには以下のようなものがあります。
- Cubase:打ち込みやボーカロイド連携に強い。作曲家やクリエイターに人気。
- Logic Pro:Macユーザーに広く愛用されるDAW。ガレージバンドの上位版。
- Pro Tools:プロの録音・編集現場で定番。ミュージカルやアフレコ収録でも使われる。
- Studio One:近年シェアを伸ばしている、直感的で扱いやすいDAW。
音楽ジャンルや目的に応じて選ぶことができ、無料版も存在するため、初心者でも始めやすい環境が整っています。
アニソン・ボカロ曲とDTMの関係
ボーカロイド曲は、まさにDTM文化から誕生しました。歌声合成ソフト「VOCALOID」にメロディや歌詞を入力することで、キャラクターが歌ってくれるという仕組みです。初音ミクをはじめとするボカロ曲は、ニコニコ動画やYouTubeを通じて爆発的に広がり、今ではアニメ主題歌やカラオケランキングに登場するまでになりました。
また、アニソンも同様に、DAWを使った打ち込みや音源制作と相性が良く、特にシンセサウンド・重厚なストリングス・テンポの速いリズムなど、デジタルならではの表現が多く用いられています。
MIDIとオーディオにおける:データの違いを理解する
DTMにおける基本的なデータには、大きく分けて2種類あります。
- オーディオデータ:実際に録音された音。波形で表示される。
- MIDIデータ:音の高さや長さ、強弱などの情報を数値化したもの。譜面のようなイメージ。
たとえば歌を録音すればオーディオデータになりますが、キーボードで入力したメロディはMIDIデータとして保存されます。MIDIはあくまで「設計図」なので、それだけでは音は鳴らず、ピアノ音源やギター音源と組み合わせて初めて音になります。
唐突ですが・・・「打ち込み」の基本と4つ打ちリズムを例にしてみましょう
ボカロ曲やアニソンでよく使われるのが 4つ打ち と呼ばれるリズムです。これは、1小節を「ドン・ドン・ドン・ドン」とキック(バスドラム)が刻むシンプルなパターンで、クラブミュージックやポップスの土台としても定番です。
DAWでは、MIDIデータをマス目のような画面に配置することで、この4つ打ちを簡単に作ることができます。さらに強弱(ベロシティ)を調整することで、より人間らしいニュアンスを加えることも可能です。初心者が最初に学ぶ「打ち込み」の練習として最適な方法です。
おわりに
DTMは最初こそ専門用語が多く、難しそうに感じるかもしれません。しかし、実際に触れてみると、歌を学ぶ人にとっても表現の幅を広げてくれる存在です。第2回では、実際にボーカロイドの導入や歌声合成の仕組みについて解説していきます。
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