ミュージカルコラム

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【ミュージカル曲コラム】『ようこそロックへ』カム フロム アウェイ/Come from away 歌い方・歌 上達法

【曲名】ようこそロックへ/Welcome to the Rock
【演目】カム フロム アウェイ/Come from away


【演目について】
この作品は、2001年9月11日に起こった同時多発テロの裏で、カナダにある小さな町・ニューファンドランドで起きた実話を基にしている。二度と起きてはいけない事件だからこそ、舞台を通して当時起こっていたことを知ってほしい、そんな願いも込められて制作されたミュージカル。

 

あの日、テロ事件の影響で北米の空域が閉鎖され、アメリカ国内に入る予定だった38機の飛行機と7,000人の乗客・乗員は、ニューファンドランドにある「ガンダー国際空港」に強制着陸した。人口わずか10,000人の小さな町に、人口の約2倍もの人々が足止めをくらい、ガンダーの住人は露頭に迷う乗客たちに衣食住を提供したりと、温かく迎え入れた。はじめは、人種、国、宗教の違いなどで衝突も起こるが、やがてその緊張感は信頼へと変わり、島民への感謝のきもちが永遠の友情へと育っていく様子が、音楽と共にスピーディーに語られる5日間の物語。

 

本作は、12人の出演者のみで100人近くの役を演じるアンサンブルミュージカルの構成で、衣装替えはほとんどなく、小道具・ナレーション・演技・アクセントの使い分けで、登場人物を次々に演じわけ、絶え間なく役が入れ替わり、変化する舞台環境の中でどの役にもそれぞれの個性と見せ場が上手く配分されている。トライアウトを経て、2017年にブロードウェイで開幕、その後各国で上演され、トニー賞、ローレンス・オリヴィエ賞、ニューヨーク・タイムズ紙の批評家賞をはじめ、数々の演劇賞を受賞。


【曲について】
この作品のオープニングナンバーで、「ニューファンドランド島の日常」と「テロが起こった時の島民の様子」がフレーズごとに交互に語られている。語り手として歌う島民がテンポよく入れ替わり、セリフを織り交ぜながら観客に伝える構成となっている。

 

島にある「ガンダー国際空港」は、かつては世界最大級だったこと。空港に隣接するガンダーは全住民が知り合いなほど小さい町だということ。あの日の朝はいつものように子供を学校に送り届けたこと。島の背景や住人の日常がどんどん明かされ、観客は舞台上のキャラクターに親近感が湧いたところで、大海原に突き出た木々と岩ばかりの地形から『The Rock』と呼ばれるニューファンドランド島の住人たちから「Welcome to the Rock」と歓迎される演出となっている。

 

また、本作品ではカナダに伝承されてきたケルト民謡、英国諸島色の濃いフォークロックなどで楽曲が制作され、劇中には、バウロンやフィドルといったケルト音楽で用いられる楽器も登場する。


【歌唱ポイント、アプローチ】
この楽曲はガンダーの住民に扮した12人の出演者が交互に歌うナンバーで、感情的に歌うというより、ニューファンドランド島やテロ当日についてを説明する「語り」の役割を担っています。全体を通して「語り」に相当する部分は、同じ高さの音かつ八分音符が連続的に続いているフレーズが多いため、八分音符にしっかりと歌詞をはめることを意識しましょう。公演では出演者全員が、拍に合わせて足でリズムをとる演出になっているので、練習する際も足でリズムをとると曲を掴みやすいです。

 

サビは「そう!我らこの島の民」のフレーズを繰り返し歌う部分ですが、『The Rock』と呼ばれる岩ばかりの地形のように、逞しく生きてきた島民を表現するため、一音一音を力強く歌うと良いでしょう。

 

テロの報道を聞いたシーンから、打楽器のバウロンが中心だった伴奏はピアノの旋律へと変化し、曲の雰囲気がガラリと変わります。テロの報道で島全体に一気に緊張感が走った様子や、逞しい島民の繊細な部分を見せるように意識しましょう。また、このシーンからソロのパートは無くなり、ユニゾンで歌う演出となります。この演出によって、それぞれの日常を過ごしていた島民たちが、テロを知って力を合わせる様子が表現されています。


 

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