第1回 ミュージカルとは何か?その起源をたどる~ミュージカル史~
カテゴリ
《ミュージカルとは?》
ミュージカルは、「芝居」と「音楽」の融合によって生まれた演劇です。
台詞と演技だけでは表現しきれないことを、音楽やダンスを加え、表現方法を無限に広げながら、「芝居」「音楽」「ダンス」のすべてが一体となって物語を紡いでいくのがミュージカルの特徴となります。
《ミュージカルはどうやって生まれたか?》
16 世紀の末、イタリア・フィレンツェで、ギリシア悲劇を復活させようとした人々が、「台詞を音楽に乗せて歌う試み」が始め、それが王侯貴族の間で持てはやされました。この生み出された音楽劇が、現在まで続くオペラの始まりと言われています。しかし、音楽的には高度でも、物語の内容が深刻だったため、次第に飽きられるようになります。そこへ登場したのが、幕間の演目です。歌と台詞で構成された「喜歌劇」が「オペラ,ブッファ(のちのオペレッタ)」と呼ばれ、18 世紀半ばから庶民に愛されました。
これが、やがてフランスやウィーンにも浸透し、ミュージカルの基盤を作りました。
世界初の「ミュージカル」―ベガーズ・オペラ
そして、1728 年に、世界初のミュージカル「ベガーズ・オペラ」がロンドンで誕生しました。「べガーズ・オペラ」は、当時の「イタリアオペラの人気」と、それを盲信する上流階級を皮肉った音楽劇。ジョン・ゲイによるこの舞台は、貴族社会を風刺し、社会の底辺に生きる人々を主役に据えました。特長はオペレッタ同様、ストーリーを台詞と歌の両方で構成しましたが、従来のオペラが扱ってきた神話や悲劇ではなく、日常的な人間模様を描いた点が革新的でした。
演劇の根幹であるドラマ性を保ちつつ、歌とセリフを融合させるという発想が、まさにミュージカルの原点だったのです。
ミュージカルという呼び名
「ミュージカル」という呼び名は、もともと「ミュージカル・シアター」の略語でした。直訳すれば「音楽劇場」。つまり劇場で、お芝居と音楽とダンスを融合させて上演する形式を指していたのです。今日私たちが親しむブロードウェイやウエストエンドの華やかな舞台は、この「ミュージカル・シアター」の流れを受け継いでいるといえます。
まとめ
ミュージカルの起源は、オペラの厳かな世界から始まり、庶民的なオペレッタを経て、社会を映し出す『ベガーズ・オペラ』で大きな転換を迎えました。世界の各地で「芝居・音楽・舞踊を組み合わせて物語を表現したい」という願いが形を変えて現れた結果、ミュージカルというジャンルが生まれたのです。
次回は、ヨーロッパで芽生えた表現がどのようにアメリカへ渡り、ブロードウェイという舞台文化を築いていったのかを探っていきます。
第2回 アメリカ上陸とブロードウェイの誕生~ミュージカル史~