「オリビアを聴きながら」歌い方・コード進行解説|杏里の名曲を徹底分析
今回は1978年リリースにリリースされた杏里のデビューシングル「オリビアを聴きながら」を解説していく。
作詞・作曲はシンガーソングライターの尾崎亜美。切ない大人な失恋をテーマに、優しく柔らかな雰囲気で歌われるこの楽曲は、様々なアーティストにカバーされている歌い継がれる名曲となっている。
| 楽曲名 | オリビアを聴きながら |
|---|---|
| アーティスト | 杏里(デビューシングル) |
| 作詞・作曲 | 尾崎亜美 |
| リリース | 1978年 |
| Key | G |
| BPM | 76 |
| ジャンル | ポップス/バラード |
| 難易度 | B |
歌詞の考察
この楽曲では女性目線での恋の終わりを描いている。
作中やタイトルに登場する「オリビア」とはイギリス人歌手オリビア・ニュートン=ジョンの事。杏里がオリビアのファンである事を聞いた尾崎亜美が作中に取り入れたという逸話がある。また、サビ中での「making good things better」という歌詞だが、これはオリビアの楽曲「Making A Good Things Better」から由来している。上記の楽曲では「2人の愛をさらに深め、もっと育てよう」という内容の歌詞であるが、本楽曲の「いいえ、すんだこと」や「愛は消えたのよ」と内容を繋げており、華やかだった恋の終わりを表現している。
基本的には歌詞の内容は非常に分かりやすく、情景が浮かび易い言葉でストーリーが進んでいく。
注目したいのはサビ終わりのワンフレーズ「疲れ果てたあなた 私の幻を愛したの」。ここの解釈が非常に難しく、歌詞の区切りでは「疲れ果てたあなた」と1つの言葉になっているのだが、楽曲において「あなた」についての描写は殆ど無く、疲れてしまった理由等は明記されていない。特に説明が無くとも「日々に疲れているあなたが求める私は本当の私ではなかったの」と解釈出来るが、上記の理由を踏まえると「疲れ果てた あなた 私の幻を愛したの」と区切ると「本当の私ではない私を求めるあなたに疲れてしまった」と解釈がし易く、ストーリーが繋がってくる。
歌詞は聴き手それぞれで自由に解釈して良いものなので、より自分が感情移入できる解釈をしてほしい。
メロディとコード・リズムの兼ね合いを検証
BPMは76。Key=G。
Aメロコード進行
|G |D/G |Dm7/G E7/G#|Am7 |
|Cm7 F7 |Bb△7 |A7 |D7 |
|G |Bm7 |Dm7 E7 |Am7 |
|Cm7 F7 |Bb△7 |A7 |D7 Am7/D D7|
Aメロのコード進行は非常に秀逸な作りとなっていて、部分転調を繰り返すが聴き馴染みの良い美しいサウンドとなっている。
先ず初めにベース音をGにキープするペダルポイントという技法が使われている。ベース音をキープする事によりサウンドを落ち着かせ、導入を穏やかにしている。
3小節目Dm7/GからはKey=Amに部分転調をし、Ⅳm7-Ⅴ7を経てⅠm7に解決。
5小節目からはKey=Bbへの部分転調となりⅡm7-V7-Ⅰ△7の進行。
7小節目からはKey=Gに復調(元のKeyに戻る事)する為のⅡ7-Ⅴ7となっている。
注目をしたいのは部分転調の仕組み。
ここでの部分転調を理解する為に
Key=C・Am Key=Bb・Gm
と、登場する2つのKeyの平行調を理解しておきたい。
先ずは2小節目Key=Cの流れから。
Key=GからKey=Cの度数の関係を見てみると4度上の転調。
Key=Gのみで考えるとJ-popsでは部分的にVm7-Ⅰ7-Ⅳ△7(Dm7-G7-C)という流れで広く使われるテクニック。しかし、この楽曲ではKey=Cの部分転調として考え、さらに平行調転調(key=Am)へと繋げている。本来ならばDm7-G7-Cの流れだが、Key=Amにする為にDm7-G7-Am7へ変更。さらに、解決間を強くする為にセカンダリードミナントを使用し、Dm7-E7-Am7へとコード進行を変化させている。
次に5小節目からの流れだが、Key=Amの平行調であるKey=CそしてKey=Cの同主調であるKey=Cmを想定してCm7が現れている。ここでは同主調であるKey=Cmとして考えるのだが、それと並行してCmをImではなくⅡmとして考えるJazz等でよく使われるテクニックが使用されている。Cm7をⅡm7として考えるのでⅡm7-V7-I△7の流れとなり5小節目からはKey=Bbとなる。
7小節目からはKey=Bbの平行調であるKey=Gmへの平行調転調に向かう進行となっていてセカンダリードミナントによるD7、ドミナントに向かうドミナント(これをドッペル・ドミナントと言う)であるA7を使用。最後にKey=Gmの同主調であるKey=Gに同主調転調をし、復調するという循環コードが生まれている。
非常に複雑な流れとなっているが、平行調転調、同主調転調を繰り返す理に適ってコード進行となっている為、実際の進行と解説をよく照らし合わせテクニックを学んで欲しい。
メロディラインとしては部分転調に合わせてスケールをGメジャースケール、Cメジャースケール、Bbメジャースケールと切り替えている。
7小節目、8小節目ではスケールはBbメジャースケールのままだが、セカンダリードミナントやドッペルドミナントにより変化したコードトーンをしっかりと拾っている。7小節目、8小節目に限らず、部分転調の際には必ず小節頭が変化したコードトーンを拾っている点にも注目。これに限らず部分転調をする小節頭では必ずコードトーンかつスケールの変化した部分をメロディがとっている為、メロディ単体でも転調感をしっかりと感じる作りとなっている。
リズムとしては8分音符中心のメロディとなっているが、リズムをのっぺりさせない為に所々16分音符とシンコペーションを使用。全体的にカチッとリズムをはめるのではな無く、大きく円を描くようにリズムを大きくとって歌唱に望んで欲しい。

サビコード進行
|C D7 D7/C|Bm7 Em7 |Am7 D7|Bm7 Em7 |
|C D7/C |B7 Em7 |C#m7(b5) |Am7/D D7 B7/D#|
|Em Em△7/D# |Em7/D C#m7(b5) |Am7 D7 |G |
サビではⅣ-Ⅴ-Ⅲ-Ⅵの王道J-pops進行にセカンダリードミナントのB7、モーダルインターチェンジによるC#m7(b5)。最後にはラインクリシェを使用して展開にもう一波を作り出している。
先ず最初に注目をしたいのは1小節目と5小節目に使用されているD7/Cコード。同じコードだが、異なる役割となっている。
1小節目は2小節目のBm7になだらかに進む為にベース音を下降させる為のコード。
5小節目はペダルポイントによりベース音をキープし展開を穏やかにする役割となっている。
このように1曲の中で同じコードが違う役割を持つ場合があるのでアナライズの際には注意をしたい。
次にモーダルインターチェンジによるC#m7(b5)に注目。
モーダルインターチェンジとはKeyの1度である音をスケール内に含む別のKeyからコードを借用する技法。基本的には同主調であるマイナーキーからの借用(Key=GならばKey=Gmからの借用)が多いが、今回はGの音が4度に当たるKey=Dからの借用となっている。Ⅳ△7の代理コードやⅣ△7に向かうコードとしてJ-popsでは広く使われるコードとなっている為覚えておきたい。
最後にコードの構成音を半音ずつ下降又は上昇させるラインクリシェ(クリシェ)という技法。
クリシェは基本的にKeyのⅠ・Ⅱm・Ⅵmで使用される事が多い。9小節目からはⅥmであるEmコードのルート音を半音ずつ下降させている。小林明子「恋に落ちて-Fall in Love-」やテレサ・テン「時の流れに身をまかせ」でも同様にサビの最後で新しいモチーフにクリシェを使用して展開をドラマティックにしているので是非参考に聴いてみて欲しい。
メロディラインとしては一見特にモチーフ等も使用されず次々に展開が進んで行くように見えるが、実は非常に秀逸なモチーフが隠されている。
注目をしたいのは1小節目・2小節目・5小節目。下記譜面を見てみるとメロディやリズムが全てバラバラに見えるが、音程の上がり下がりはしっかりと統一されている。これによりメロディの雰囲気がバラけず、1つのセクションとして成り立つ事が出来る。
また、9小節目のラインクリシェのメロディも非常に美しく、低い音程で同じメロディを繰り返し、そこから階段を少しずつ登るかのように上昇し、ダイナミックかつドラマティックな展開を作り出している。
リズムとしてはAメロと変わり16分音符が中心となり展開を変化させている。細かく16分音符でメロディが構成されている為、テンポキープには十分に注意。また、Aメロと同様に16分音符とシンコペーションがセットになってリズムが作られている。メロディラインが伸びる際には必ず16分裏からのシンコペーションとなるので、リズムを大きくとる事に変わりは無いのだが、Aメロより細かく感じておく必要がある。しっかりと16分音符を感じて歌い上げて欲しい。

いかがだっただろうか?
構成はA・サビとシンプルながらもメロディ・コード進行と、非常に良く練られた作りとなっている楽曲だ。
楽曲を深く知れば知るほど歌唱の際のヒントが沢山隠れているので是非解説を何度も読んで自分のものにして欲しい。
声について
透明感と力強さを兼ね備えた声。低音から高音まで統一された音色でしっかりと歌いましょう。歌い出しがG4、そして「お」という母音と、女性にとっては難しい音になっています。喉頭が下がりすぎないように注意してください。低音部やサビの感情の乗る部分で声帯が熱くなりすぎないようコントロールしましょう。
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