ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』から学ぶ ― 歌唱と表現
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ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』は、1960年代を代表するアメリカのロックバンド、「ザ・フォーシーズンズ」の誕生から成功、そしてその後までを描いた作品です。
舞台版は2005年に初演され、翌年にはトニー賞4部門を受賞。高い評価を得ました。その後、映画版も制作され、作品としての魅力は世界中に広がりました。この作品は単なる音楽成功物語ではありません。時代背景、人間関係、葛藤、成功と挫折。そうしたドラマの積み重ねが、舞台上の「歌」に深みを与えています。
ボーカルを学ぶ立場として大切なのは、「音程」や「声量」だけではありません。このミュージカル作品では特に、物語の理解と役の背景を体に取り込んだうえで歌うことが重要になります。
1960年代という時代背景を理解することで、歌詞のひと言ひと言に説得力が生まれる
ザ・フォーシーズンズが活躍した1960年代は、「ブリティッシュ・インヴェイジョン」と呼ばれる時代。ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズといったイギリスのバンドが世界的に人気を博し、アメリカのバンドはやや下火の状況でした。
そのような中で、ニュージャージー出身の4人組が全米1位を連発し、世界的ヒットを記録します。これは決して順風満帆な成功ではなく、地道な下積みと挑戦の連続の末に手にした結果でした。
フランキー・ヴァリの「声の響き」とは?
本作で最も象徴的なのは、リードボーカルであるフランキー・ヴァリのハイトーンボイスです。この独特の響きは、単なる裏声ではありません。
彼の歌唱のポイントのひとつに「トワング」と呼ばれる発声があります。
トワングとは何か
トワングとは、声を鼻腔付近に集めるような響きの作り方です。やや金属的で、前に抜ける明るい音色が特徴です。強く張り上げるのではなく、響きをコントロールして前方へ飛ばすイメージです。
この響きをベースに、ファルセット(裏声)を混ぜることで、フランキー・ヴァリ特有の軽やかで伸びやかなハイトーンが生まれます。単純に高音を出そうとすると喉に力が入りがちですが、トワングを活用すると無理なく音が前に出ます。ミュージカルの舞台では、マイクを使う場合でも「通る声」が求められます。響きの方向を理解することが大切です。
発声技術だけでは足りない理由
しかし、発声技術だけを真似しても本質には近づけません。
『ジャージー・ボーイズ』では、貧しい環境から抜け出そうとする若者たちのエネルギー、仲間との衝突、成功の喜びと代償が描かれています。フランキーの歌は、その人生の積み重ねがあってこそ説得力を持ちます。
ミュージカルの歌唱とは、「背景を背負って歌う」ことです。
・どんな時代なのか
・どんな状況で歌っているのか
・何を乗り越えようとしているのか
これらを理解したうえで歌うと、同じフレーズでも表情がまったく変わります。
終わりに
『ジャージー・ボーイズ』は、成功の裏側にある努力と葛藤を描いた作品です。そして同時に、歌唱表現の奥深さを教えてくれる教材でもあります。
高音を出すことだけが目標ではありません。響きを整え、物語を理解し、自分の身体を通して表現する。その積み重ねが、舞台で通用する歌につながります。
ぜひ作品を観て、聴いて、そして実際に歌ってみてください。
技術と表現の両方を磨くことが、ミュージカル歌唱への近道です。









