ボイストレーニングコラム

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【ボイトレ 歌い方】『点描の唄』(Mrs. GREEN APPLE)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)

【曲名】点描の唄
【アーティスト名】Mrs. GREEN APPLE


今回は大人気ロックバンドMrs. GREEN APPLEがゲストにシンガーソングライターである井上苑子を迎え入れ書き下ろした楽曲「点描(てんびょう)の唄」を解説して行きたいと思います。

この楽曲は映画『青夏 きみに恋した30日』の挿入歌。

映画の世界により入り込めるように書かれた歌詞に注目して先ずは歌詞を読んでみましょう。この楽曲では歌詞の男性パート・女性パートでそれぞれの気持ちを歌っており、お互いの気持ちが合わさるラストサビはアレンジ、歌詞、歌唱力どれを取っても鳥肌物となっています。


【コードとメロディー・リズムの兼ね合いを検証】

 

この楽曲で注目すべき箇所はコードの多さです。

オンコードやノンダイアトニックを多く使用してメロディーをとても華やかに聴かせています。

シンプルなコード進行で自由にメロディーが乗ってくるのでは無く、複雑ですが滑らかで美しいコード進行にテンションノートを加える形でメロディーが乗っているので音楽理論を理解していないと少し難しく感じると思います。これを機にダイアトニックとテンションについて学んでみるのもいいと思います。

 

それではAメロからメロディとコードについて考えて行きたいと思います。

基本的にはダイアトニックで進行して行きますが3小節目からノンダイアトニックが多く使用されています。まずはE/G#です。次のAmに行く為のセカンダリードミナントですが歌う際に1番気を付けなければいけない箇所。歌詞の「わすれたくないと」の「す」の部分からE/G#なのですがメロディーの音程はFとなります。Eに対してのb9thの音から始まりますのでコードを意識し過ぎてしまうと逆に音程を当て辛くなってしまう場合もあるかもしれません。なだらかにスケールを下降して行くメロディーの中にコードトーンが1音しか入っていないのでしっかりと頭の中にメロディーをイメージしながら歌って下さい。

そして、3小節目の4拍目にGm7が出てきます。この際のメロディーは11thであるCの音となっているのでここも音程を取り辛い箇所となっているので注意して下さい。音楽理論を考えるとF△7に向けてのⅡ-Ⅴを作る為に出てきているGm7(Ⅱ)なので後にC7(Ⅴ)をつけてGm7-C7-F△7の流れにするのが一般的ですがここはAm7-Gm7-F△7とベース音をなだらかに下降させる為にC7が省略されてると考えるのがいいでしょう。


Bメロからはダイアトニックのみでコードが作られているので比較的に歌いやすいセクションとなっていると思います。

Gsus4のコードのみ慣れるまで少し時間がかかると思いますがGとGsus4を聴き比べ、違いを意識する事によって狙う音をイメージし易くなります。

 

サビに入ってからの注目すべき箇所は1拍目の4分音符です。

AメロとBメロの1・2拍目は基本的に8分音符で言葉を埋めていましたがサビに入った瞬間に1拍目を伸ばし開けた雰囲気を作り出しています。この事によって「いつまでも」の歌詞もより強調されています。「い」の歌詞でしっかりとアクセントを付けて歌い始める事でサビの開けた雰囲気を作る事が出来るので意識しましょう。サビでのメロディーも意識をしないと音が取り辛い箇所があるので注意が必要です。2小節目のGコードの入りは9thであるAの音から、3小節目のE7/G#はAメロと同様のb9thの音からメロディーが始まります。コードトーンではなくテンションノートからメロディーが始まりますので意識して歌って下さい。6小節目ではブルーノートであるEbの音も出てきています。

ブルーノートを上手く活用する事によって何処か哀愁漂うラインを作り出す事が出来ます。「手を取る事が出来ずとも」という切ない歌詞を際立たせてあげる為にしっかりと歌いあげましょう。また1番サビのみ最後の小節が4分の5拍子となっている点にも注目です。「すいている」と歌い終わった際に付点4分休符をしっかりカウントして下さい。ブレスなどでリズムを取るのもいいかもしれません。


2番のサビ後のCメロにあたる部分ではさらにリズムを伸ばし歌詞を強調しています。

長い音符の時はアクセントの位置を間違えてしまうとのっぺりと聴こえてしまい易いので注意が必要です。対策としては常に4拍目のアクセントを意識する事です。Cメロ1小節目の4拍目は2分音符により音が伸びているので意識し辛い箇所ですが、歌がブレないように意識しながら身体の中でしっかりとアクセントを感じてみて下さい。

 

間奏後のDメロからは今までと一転して16分音符を多用し、言葉数が多くなる事によって今にも溢れ出しそうな想いを表現しています。

歌詞の内容的にも感情をを込め易い部分になりますが、16分音符も合間って走りやすくなってしまう部分にもなっています。

感情を込めながら自分を少し後ろに引っ張り留めておく意識をするとリズムが安定してくると思います。


【16分音符について】

Aメロ・Bメロ・サビでは要所要所で16分音符が使われています。ここでの16分音符はDメロと違いはっきりとリズムを出して歌ってしまうとロボットのような固い歌になってしまいます。言葉の余韻を作るように柔らかくリズムに乗せてみて下さい。


【コーラスについて】

この楽曲はコーラスもリードと言っていい程大事な役割をしています。

基本的には3度下又は3度上になるのですが、オクターブ下の3度上であったり合唱曲のようなラインで2つのメロディーが重なり合う箇所もあったりと様々なコーラスラインが作られています。


【メロディーラインとスケール】

この楽曲では1フレーズ内でのメロディーの音飛びが少ないように見えますが、主メロとコーラスとを行き来する箇所が多く、ポジションのチェンジに注意して歌いましょう。スケールを下降又は上昇する事によってメロディーラインが出来ています。なだらかにメロディーが上がり下がりする事によって柔らかさが生まれるのですが、その分コードトーンが少なくなり音が取り辛い部分が多いのが特徴です。歌唱をする前にメジャースケール等の練習をし、全音・半音の感覚を身体に馴染ませてあげると音程が取り易くなると思います。


最後になりますがこの楽曲は歌詞に対するリズムの付け方が素晴らしいです。

この歌詞をこう聴かせたいからこのリズムで。と、とても意識して楽曲が作られているのを感じます。歌う際は必ず楽曲を聴きながら歌詞を読んでみましょう。そうする事によってどう表現するとより聴き手に言葉が伝わるか意識がし易くなります。


【声について】

女声、男声ともに音域が広く、交互にコーラスパートに移行するため、重いチェストボイスでは動きが悪くなりがちです。また、ハーモニーが重要となっていますので、ボーカルラインだけを歌えれば良いというわけではありませんので、まずは正しいピッチで歌えるように練習しましょう。


 

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