ボイストレーニングコラム

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【ボイトレ 歌い方】『猫』(DISH//)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)

【曲名】猫
【アーティスト名】DISH//


今回は日本のダンスロックバンドDISH//の10thシングル『僕たちがやりました』のカップリングとして収録された『猫』を解説。

THE FIRST TAKEver.としても配信リリースされているこの楽曲の作詞、作曲はシンガーソングライターのあいみょんが担当。柔らかなメロディラインや歌詞の言い回しの所々にあいみょんの色がしっかりと出ています。


歌詞を少し考察していきましょう
この楽曲は恋人を猫に例えた別れの歌と一度聴いただけで大体の意味は理解出来るストレートな詞となっています。主人公目線の語り口調で終始書かれている点に注目。語りの終わり際が「飲み込んでしまえよ」や「君の顔なんて忘れてやるさ」など何処かに投げるような言葉になっている点にあいみょんらしさがとても出ています。猫のように気まぐれに、ある日突然恋人から別れを告げられ失恋してしまった主人公としてストーリーが描かれているという解釈も出来るのですが、少し見方を変えてみると突然恋人と死別をしてしまった主人公という解釈をする事も出来るのに気付くでしょうか?

 

猫は死を察すると姿を消す習性があると昔から言われています。突然死別してしまった恋人と猫のこのような習性を掛けているようにも考える事が出来ます。また、この詩を書いたあいみょんが「君の膵臓をたべたい」という映画からインスピレーションを受けたと語っています。この映画は主人公と亡くなったヒロインの思い出を描いた作品。詞の中の主人公があまりにも投げやりで自暴自棄になっている点を見ると後者の考察の方が筆者の中では腑に落ちる気がします。主人公の置かれている立場が変わると言葉の意味がガラッと変わってきますので是非2つの立場で改めて詩を読んでみて考察をしてみましょう。


メロディとコード・リズムの兼ね合いを検証
ここからはメロディとコード、リズムをアナライズ。この楽曲を歌唱するにあたってシャッフルというリズムについて理解しなければいけません。シャッフルとは簡単に言ってしまえば3連符の真ん中の音がタイで伸びているリズム。8分音符2つ又は16分音符2つを3連符として考え真ん中の音を伸ばすとシャッフルのリズムとなります。言葉で表すと凄く難しく感じてしまうと思いますので是非下の図を参考に考えてみて下さい。

 

シャッフルには8分シャッフルと16分シャッフルの2種類があります。この楽曲は16分音符が3連になる16分シャッフルとなりますのて意識をしましょう。また、楽曲がシャッフルの場合楽譜等の始まりに必ず指示がありますので見落とさない様注意が必要です。


Aメロのアナライズ
この楽曲はKeyがEbとなっています。

 

あいみょんといったらシンプルなコード進行に柔らかくキャッチーなメロディーが乗ってくる印象がありますが、バラードの楽曲ではシンプルなコード進行の中のここぞという箇所にノンダイアトニックを使用し楽曲を盛り上げる作り方をしています。コード進行は|Eb-Bb|Gm7-Cm7|Ab|Bb|と、ここはダイアトニックコードに従ったシンプルな構成。これに乗ってくるメロディも同じ音程を繰り返す平なラインとなっていますが、ここで注目したいのは2回目のAメロです。(A’と書くのが一般的ですがこの楽曲は構成が少し複雑ですので2回目と表現しています。)基本的なコード進行は同じですが、乗ってくるメロディが歌詞と連動するように変化している点に注目して下さい。

 

1回目Aメロは情景と現状、2回目Aメロは主人公の感情。
Aメロで同じ音程を繰り返す事で普段と変わらぬ情景や喪失感などを表現しているようにも感じとる事が出来ます。それに対して折り返しのAメロでは主人公の中の強い気持ちが表れるようにリズムが細かくなり、音程も高くなります。注意すべきは3連16符音符。半拍に対して音を3つ入れ込むという難しいリズム。この楽曲では曲全体が16分シャッフルとなっていますのでシャッフルの間に音を1つ入れ込むように考えれると上手くリズムを取れますので意識して下さい。そして、前述した構成が少し複雑という部分ですが、一般的な楽曲ではA-A’と2回繰り返しBメロに向かう構成が多いです。ですが、この楽曲ではAメロのモチーフを3回繰り返しています。現実-願望-現実と歌詞の世界感を同じモチーフ展開で表現している事に気づけると表現の幅がとても広がりますので意識をしましょう。


Bメロのアナライズ

Bメロに入ってからは投げやりな気持ちを表すかのように長めの音符が使用されています。注意すべきは1小節、3小節目のAbのコード。

 

メロディラインの度数は2-△7-2-△7となっていてコードの中に全く入っていない音となっているので非常に音程の取り辛い箇所となっています。アウフタクトで入ってくるEbの音を基準に音程の上がり具合を意識出来ると安定し易くなりますので練習をして下さい。また、Bメロに入ってからはシャッフルがかなりイーブンに近い跳ね具合となっています。ここでは言葉の語感を保つ為に跳ね具合を少なくしているように感じます。

試しにAメロの跳ね具合と同じように歌唱をしてみると言葉のハマりが悪く少しノリが良くなってしまうのを感じてもらえるでしょうか?
楽曲を良く聴いて絶妙な跳ね具合を感じ取って下さい。他にも3連符やノンコードトーンの箇所が多くあり、歌唱をするにあたって非常に難しいセクションとなっているので下記の譜面を参考に自分の苦手な部分を意識して練習をして下さい。


サビのアナライズ

サビに入ってからはリズムが16分のシャッフルへと戻ってきます。サビではシンプルなコード進行に少しノンダイアトニックコードで色を加えコードトーンを中心にメロディラインが展開されていきます。ここで意識をしておきたい部分は7thコードが使用されている箇所。

 

基本的には3和音でコード進行が展開されていくのですが、時折り7thコードが使用されています。7thコードを使用する理由として、雰囲気を変える為とメロディラインに7thの音が使用されているの2種類が挙げられます。サビでは後者の理由によって7thコードを使用している事がアナライズによって分かります。コードに対しての7thの音はコードトーンの中でも1番取り辛い音程となりますのでコードの響きをしっかりと確認し意識をして歌唱しましょう。

 

また、メロディラインが殆どの場合4拍目裏からアウフタクトえで始まります。シャッフルの裏を感じる事が最初は難しい事やサビに入り感情が入り過ぎてしまう事によってついハシリがちになってしまう箇所なのですが、頭の16符休符を疎かにしてしまうととてもダラシなく聴こえてしまいます。クリック等を使い正しいリズムで入れるように練習をしましょう。


この楽曲では音程を取る事より16シャッフルのノリを掴む事に苦戦をすると想定。シャッフルといってもカチカチにキメたシャッフルで歌唱をしてしまうと柔らかなメロディが台無しになってしまいます。先ずは楽曲を良く聴いて身体を揺らす所から始めてあげるとリズムの感覚を掴み易くなります。

 

また、改めてアナライズをしてみると歌詞を際立たせる為にメロディラインがよく考えられている事が分かります。メロディラインだけで主人公の感情や情景が聴いてる人に伝わってくる。これもこの楽曲が大ヒットした一つの要因かもしれません。色々な所に注目をしながら楽しんで練習をしましょう。


声について

Aメロ、Bメロは中音域~低音域で細かい音符が続きます。リズムが固くならないよう余分な力は抜いて歌いましょう。サビに向かって音域が上がりますので、体の支えをしっかり保ちましょう。サビは高音が続きますので、喉頭を高く保って歌ってみてください。息の吸いすぎに注意しましょう。女性が歌う場合はキーを+2~5上げて自分の声の良い響きがサビに来るよう設定してください。男声も高すぎると感じたら、原曲キーに拘らずキーを下げて練習しましょう。


 

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