ボイストレーニングコラム

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【ボイトレ 歌い方】『UNDEAD』 (YOASOBI)を上手に歌うコツ!(ポイント解説)

【曲名】UNDEAD
【アーティスト名】YOASOBI


【UNDEAD 楽曲解説】

コンポーザーのAyaseとボーカルのikuraによる音楽ユニット、YOASOBIが歌う楽曲。

 

アニメ「〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン」のエンディングテーマ。

「〈物語〉シリーズ」とは、西尾維新によるライトノベルシリーズ。2006年に刊行された「化物語」は漫画化・アニメ化もされる人気ぶりで、現在まで根強いファン層を獲得し続ける人気シリーズである。歌声の可愛らしさに反して、ダークな世界観とポップなイラストが対照的に表現されているMV。

 

「今を生きるもの」への強いメッセージ性を秘めたものとなっている。過去のしがらみや未来への悲観にとらわれず、前を向いて進もうといった、YOASOBIの思いが込められている作品なのではないだろうか。


【サウンドとリズム】

今回の楽曲のジャンルは、エレクトロポップ。

 

エレクトリックなサウンドに、ヒップホップやJ-POP(歌モノ)の要素を取り入れたジャンル。これらのサウンドはYOASOBIを象徴とするサウンドとして、すっかり定着してきている。シンセサウンドに着目してみると、チップチューン(80年代のPCやゲーム機器の内蔵音源チップで使用された音色を使用した楽曲。主にピコピコした音色が特徴的。)のサウンドが見受けられる。サビ前の盛り上げるセクションなどはEDM(エレクトロニックダンスミュージック)の常套テクニックとして使用される、「ビルドアップ」と呼ばれるもの。

 

「ビルドアップ」とはサビ(ドロップ)の前に盛り上げるパートのことを指す。よく使われる手法としては、ドラムのスネアが倍速になってゆくフレーズなどが有名。ビート自体はダンスビートを主体としたもので、テンポはダンサブルなものとしては早めのBPM144。楽曲の過激さをより際立たせている。

 

ボーカルトラックにも加工系の処理・エフェクトが多用されている。いわゆるボカロサウンドにも似た印象。特に、声のリリースの処理が機械的な印象を与えている。スピード感のある楽曲で、フレーズも言葉数が多めとなっている。16分のキレ・シンコペーションに注意して歌いましょう。


【セクション毎のメロディ解説】

 

全体のコードについて考察。

コードの動きが激しい箇所と、ワンコード上でフレーズが飛び交う箇所の主に2パターンに分けることができる。

 

シンセがリードを取る箇所や、歌の掛け合い・ラップパートの箇所はワンコード(Dm)にて構成されている。サビ前やサビではコードが目まぐるしく変化してゆく印象である。今回の楽曲では「循環しないコード進行」が多く、またノンダイアトニックコード(ダイアトニックコード外のコード)が多用されており、楽曲の浮遊感・難解なイメージをより強く印象づけている。

 

各コードの役割については、下記の解説次に詳しく触れていく。メロディに関しては、音飛びが激しい箇所が多く、通常のスケール外の音も多用されていますので、譜例を参考に音取りをしっかり行い、歌っていきましょう。


【「UNHAPPY?」から始まる箇所】

テンポの速い16分のフレーズで構成されたメロディ。
滑舌と細かい音程の動きに注意して歌いましょう。「目を逸らした過去も」から始まるフレーズから、コードの動きが激しくなる印象。サビのようなセクションだが、Bメロという立ち位置であるところもYOASOBIが作る、楽曲の面白さとなっている。

 

最後の4小節目のフレーズではDのメロディックマイナースケールに当たる音に注意すること。曖昧な音程にならぬよう、譜例を参考にまずはテンポを落として音取りをしましょう。コード進行としては、Key=FにおけるJust The Two Of Us進行(丸サ進行)をベースにしたコード進行。

 

Bbmaj – A7 – Abmaj7 – G7 といった流れとなる。
また、Abmaj7 – G7 の箇所はKey=Ebへの部分転調のようにも感じられる。
だが、メロディ自体の調性は変わらないため、ここで使用されるAbmaj7はKey=Fから見た「bⅢmaj7」となり、こちらは同主調である「Key=Fmからの借用したコード」と捉えられる。こういった考え方を「モーダルインターチェンジ」と呼ぶ。

 

 


【「ねえねえねえ 何だかどうして」から始まる箇所】
レンジが低めの音で構成されたメロディですが、言葉数が多めである点に注意。言葉遊びのように「言葉のリズム」を感じながら、歌っていきましょう。メロディとしてはDのメロディックマイナースケールのM7th(スケールからみた長七度の音)の音が多用されている。

 

【「幼気で痛い記憶の奥」の箇所】
こちらは特にスタッカートを意識して歌いましょう。最後の「く」の音程はDのメロディックマイナースケールにおけるM7thの音となっている点に注意。譜例を参考に音を正確に取れるようにするのがポイント。

 

 


【「残念? もう居ないのに」から始まる箇所】
こちらの下降フレーズの音程が、Dのフリジアンスケールであるb9thの音が使用されている。不安定な音程ですので、こちらも譜例を参考に音を正確に取れるようにしましょう。

 


【「巻き付いたまま まだ離れない」から始まる箇所】
こちらは他の箇所と相反して、休符が多めのフレーズとなっている。
ここは休符が入ることにより、ビートの流れを変化させ、リズム的アプローチでセクションの印象付をはかっていると思われる。跳躍する2音のメロディの音程に注意しましょう。

 

【「在りし日の自分」の箇所】
こちらでは「ひ」の音程がフラットする。コード進行から考察すると、Cmのキーに部分転調したメロディと捉えることができる。「在りし日の自分」をワンフレーズとして、譜例を参考に音取りをしましょう。

 

 


【「UNDEAD 死んじゃいない」から始まる箇所】
後半のA7とD7のコード上のメロディでは、コードトーン(コードを構成する音のこと)を追うようなメロディフレーズとなっている。特にコードトーンである、M3rdの音に注意。譜例を参考にコードの音を意識して、メロディを捉えられるようしっかり練習しましょう。

 

 


【「残念 積んだ経験の因果」から始まる箇所】

こちらはラップパート。リズムと言葉のキレを意識して、歌えるよう練習しましょう。

 

【「古今東西 一切合切」から始まる、ラスサビ最後の箇所】
こちらは怒涛の難問フレーズ。フレーズの前後から息継ぎの箇所を意識することで、フレーズを最後まで歌い切る必要あり。譜例を参考にしっかり練習しましょう。

 


【声について】
テンポも速く音の跳躍も難しい曲であるため、声帯は薄く保ち、息で押さないよう体幹を保って歌いましょう。
高音に素早く移れるように、喉頭の位置を少し高めに準備しておくと歌いやすくなるが、その際、喉が閉まるような感覚が無いよう十分に注意して下さい。発音も口腔内の動きをなるべくミニマムにして無駄な動きを減らしてみてください。


【豆知識】

リリースする楽曲が大ヒットを続ける、YOASOBI。

2025 年6月8日にはQUEENやOasis、マドンナなども公演を行ったことのある、イギリスのWEMBLEY ARENAにて単独ライブが行われるとのこと。なんと、チケットは即完売で、翌日に追加公演が決まる人気ぶり。楽曲内にも英語や世界各国の音楽要素を取り入れているところから、グローバルなアーティストとしての確固たる地位を築き上げている、日本が誇るアーティストである!!


 

 

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