キーボディストによる音源を聞き分ける講座 第4回~鍵盤楽器・上モノ編~
第4回:鍵盤楽器・上モノ編
「ピアノ伴奏に慣れているけれど、バンド演奏になると音が多すぎて迷子になる…」そんな声をよく耳にします。実はその理由のひとつが、鍵盤楽器や上モノの音です。
ピアノ伴奏とバンドサウンドの違い
ピアノだけで歌うとき、伴奏者はコード、ベース音、メロディの補助までを一人で弾いてくれます。ところがバンドになると、ベースはベース、ギターはギター…と役割が分かれるため、ピアノの伴奏だけに慣れている人は「音がスカスカに感じる」「どこを聴けばいいのかわからない」と戸惑ってしまうのです。
バンドサウンドにおけるピアノは、全体の一部にすぎません。むしろ、他の楽器が作る隙間を埋めたり、色彩を添えたりする役割へと変化します。
オルガンとシンセサイザーの役割
オルガンの音は、持続する和音で空間を満たします。まるで液体が器に広がるように、曲のすき間を優しく埋めてくれるのです。シンセサイザーはさらに多彩で、弦楽器のようなストリングス音、電子的なリード音、さらには効果音まで生み出せます。モアのライブステージでも、シンセが入るだけで「急にプロっぽくなった!」と感じる瞬間があります。音の“厚み”を加える力が、それほど強いのです。
聴き分けるコツ
鍵盤系の上モノは、ドラムやベースほど主張が強くありません。だからこそ、意識しないと埋もれて聴き逃してしまいます。コツは「ふわっと広がる音」や「背景に鳴っている持続音」に耳を向けること。
例えばバラードで、サビの直前にふわっと音が重なったとき、それはシンセやオルガンの仕業かもしれません。ライブでは見た目で「鍵盤を押している瞬間」を確認しながら聴くと、より理解が深まります。
練習法:3段階で耳を慣らす
1. ピアノ伴奏だけの音源を聴く
シンプルな構造を知り、「ピアノが全部をカバーしている」状態を体感する。
2. 同じ曲をバンド編成で聴く
「ピアノの音が少なくなった」と感じても、他の楽器が補っていることに気づく。
3. シンセやオルガンの音を探す
ふわっと広がる和音や、背景を彩る音を意識して聴く。
まとめ
鍵盤楽器や上モノは、主役というよりも「雰囲気を決める照明」や「部屋に置く花」のような存在です。なくても曲は成立しますが、あると一気に豊かになる。次に音楽を聴くときは「背景の音」に意識を傾けてみましょう。きっと新しい発見があります。