大滝詠一「君は天然色」歌い方・コード進行解説|A LONG VACATIONの名曲を分析
【曲名】君は天然色
【アーティスト名】大滝詠一
| 楽曲名 | 君は天然色 |
|---|---|
| アーティスト | 大滝詠一(おおたきえいいち) |
| リリース | 1981年3月21日(7thシングル)・アルバム『A LONG VACATION』収録 |
| 作詞・作曲 | 作詞:松本隆 / 作曲:大滝詠一 |
| BPM・Key | BPM140・Key=E(イントロ)→Key=D(Aメロ以降)・トップノートHiF# |
| コード進行 | ラインクリシェ(メジャー/マイナー)・サブドミナントマイナー・セカンダリードミナント・クロマチックアプローチ |
| アレンジ | 日本版ウォールオブサウンド・多重録音・エコー多用・1960年代アメリカンポップス的サウンド |
| ジャンル | シティポップ・歌謡曲・J-POP・オールディーズ |
| 特徴 | シャッフルビート・2拍3連リズム・軟口蓋コントロール・美音化発声・松本隆の切ない詞世界 |
| 難易度 | A(シャッフル/2拍3連リズム・高音域HiF#・軟口蓋コントロールが難所) |
「君は天然色」の楽曲解説
「君は天然色」は、 1981年3月21日に発売された大滝詠一の7枚目のシングル です。同年リリースの伝説的名盤 『A LONG VACATION』(通称:ロンバケ) の1曲目に収録され、シティポップ / 歌謡曲を代表する名曲として今なお愛され続けています。
多人数による同時演奏によって多重録音され、エコーにより残響感を強調されたこのサウンドは、非常に重厚で迫力があり 「日本版ウォールオブサウンド」 を体現した楽曲として知られています。全体的に大滝詠一が愛聴した 1960年代のアメリカンポップスの要素 が取り入れられており、イントロは The Honeycombsの「Color Slide」 が元ネタとなっています。
歌詞の考察
この楽曲は作詞をした 松本隆が亡くなってしまった妹を想い 描かれた詞となっています。「想い出はモノクローム」は妹を失いどん底の精神の中で見た街の色から生まれたフレーズ。続く「色をつけてくれ」という詞も「人が死ぬと風景は色を失う。だから何色でもいい。染めて欲しい。」という想いが込められています。
歌詞の構成として、 Aメロ、Bメロを通して一つの文になるという珍しい作り となっている点に注目。Aメロ頭では情景を想像させるような言葉を使用し、BメロではAメロに応えるようにその情景での心情などを表しています。
また、 サビの歌詞は1番、2番、3番すべて同じ となっており、楽曲を通しての伝えたい想いをより強調させています。初めて歌詞を読むと恋人との別れに未練をもった主人公の詞に思えますが、背景を知ると解釈が変わり、より世界観に入り込むことができます。
この楽曲は情景も相まって言葉1つ1つが非常に美しく、切ない詞となっています。ぜひ改めて詞を読みながらこの楽曲を聴き直して世界観を感じてみてください。
メロディとリズム・コードの兼ね合いを検証
BPMは140。イントロはKey=E。Aメロ、Bメロ、サビはKey=D。
この楽曲では 8ビートがシャッフル となっています。1拍を3連符にし、1つ目と2つ目をタイで結んだリズムを シャッフル と言います。また、シャッフルのリズムのことを日本では 「ハネている」 とも言うので知識として覚えておきましょう。
シャッフルのハネ具合が非常に重要となっている楽曲のため、注意をしながら歌唱に臨んで欲しい。
Aメロをアナライズ
Aメロコード進行
|D |D |D D△7|D6 D|
|D |D |Em Em△7|Em7 A7|

Aメロでは ラインクリシェ(メジャークリシェとマイナークリシェ) を使用し、楽曲に柔らかくも切ない雰囲気を作り出しています。 ラインクリシェ とはコードの構成音を半音ずつ上昇又は下降させる進行のこと。基本的にはⅠ・Ⅱm・Ⅵmでラインクリシェを使用することが多いです。
今回はKey=Dに対するⅠとⅡmでコードの1度の音を下降させていくラインクリシェが使用されています。マイナークリシェでの基本的な流れはⅡm-Ⅱm△7-Ⅱm7-Ⅱm6となりますが、最後のⅡm6の箇所はこの楽曲のようにクリシェをするコードの4度上であるA7(V7)を使用することも多いので覚えておきたいポイント。(ⅥmでのクリシェはⅥm-Ⅵm△7-Ⅵm7-Ⅱ7となります。)
メロディラインとしては短いモチーフが階段状に下がっていく非常にユニークなメロディ。注目したいのは メロディが入っている部分ではコードがDのみである という事。メロディのモチーフ1つ1つの最終音を見てみるとDから始まりC#-C-Bと半音ずつ下降しています。これは先述したラインクリシェの考え方と全く同じ流れです。
コードはDの中でメロディのみクリシェのような流れを作った後にメロディに反応するかのようにコードがクリシェをするという、非常にユニークで秀逸なAメロとなっています。
リズムとしては先述したシャッフルのリズムをしっかりと感じ取ることが非常に重要。ただし、あまりにしっかりとハネてしまうととても元気の良いリズムになってしまうため、 柔らかくハネる ように心掛けて欲しい。メロディラインがクリシェのように下降するのと同時に柔らかくハネのリズムを取ることで、まるで螺旋を落ちていくかのような楽曲の持つ喪失感を表現することができます。
Bメロ・B’メロをアナライズ
Bメロコード進行
|G |F#m |Bm |Gm |
|F#m7 B7|Em7 E7 |A A/G|A/F# A/E|
B’メロコード進行
|G |F#m |Bm |Gm |
|F#m7 B7|Em7 A7 |D |

B、B’メロでは サブドミナントマイナーであるGm、セカンダリードミナントであるB7、E7 、そしてオンコードを使用して雰囲気に彩りを足しています。
サブドミナントマイナー はKeyのⅣをマイナーコードにする事で進行の流れを切なくする技法。Ⅳmはドミナントとして機能をするのでⅤの代理コードとして使用されることが多いです。
また、 セカンダリードミナント はV7以外でドミナントセブンスコードを作り出し、ドミナントモーション(V7→Ⅰの進行。強い解決感がある)を作り出す技法。基本的には4度上に進む進行となるため、ドミナントセブンスコードと次のコードも合わせて意識をしておきたいポイント。この楽曲ではB7→Em7、E7→Aと、どちらもしっかりと4度上に向かっています。
メロディ、リズムを解説する前にBメロのアレンジに注目してみましょう。1〜4小節では楽器のリズムが 2拍を3連分で取る2拍3連 というリズムになっています。Aメロは螺旋をぐるぐると落ちていくような雰囲気なのに対して、Bメロ1〜4小節は頭の中がトンチンカンで混乱しているようなアレンジになっていると感じることができます。
3小節目から少しずつ開けていき、5.6小節目でセカンダリードミナントでの強い進行、セクション内のトップノート、シンコペーションを使用した食いのリズム、強い想いの歌詞となっていて、まるで混乱から抜け出したかのようなメロディとアレンジになっています。
Bメロではその後オンコードを使用してなだらかに下降し、螺旋であるAメロに戻り、B’メロではDでしっかりと解決し強い気持ちを歌うサビに向かっているのも非常に秀逸です。
メロディラインとしては1.2小節、3.4小節、5.6小節で3つのパターンに分けることができます。1.2小節目ではメロディラインの動きを少なくし前述のアレンジと合わせて雰囲気を作り出しています。また、 クロマチックアプローチ を使用してより一層不穏な響きとなっています。3.4小節目ではメロディを上げ次に進んでいくような作り。そして5.6小節目でBメロ内でのトップノートを使用し、世界観を開けさせる流れです。
リズムとしてはメロディラインと同様に3つに分けると解釈がしやすくなります。1.2小節目で8分音符で細かくとり2拍3連のリズムと混ぜ合わせることでぐちゃぐちゃな頭の中を表現。3.4小節目ではメロディ以外のリズムは変わらず2拍3連ですが、5.6小節に向かうため4分、2分音符を使用して伸びのあるリズムで次に繋げています。そして5.6小節目でシンコペーションを使用し疾走感を出し、メロディそして歌詞を強調する作りとなっています。
歌唱の際には 1〜4小節目が非常に難しいセクション となっています。2拍3連に釣られないように自分自身でしっかりとリズムをキープすることも大事ですが、1拍目、3拍目頭はメロディのリズムと後ろのリズムが必ず合うので、リズムが重なる場所を知っておくと歌唱がしやすくなるので意識をして欲しい。
サビをアナライズ
サビコード進行
|D |G A|D |G A|
|D |G A|D |G A|
|D |G A|D |G A|
|D |G A|D |G A|

サビでは シンプルにⅠ-Ⅳ-Ⅴのみで構成 されており、ハッキリとしたサウンドとなっています。Aメロ、Bメロと違いサビはシンプルにすることにより、歌詞の強い想いを強調しています。
メロディラインとしては、全体的にとても力強さを感じるライン。モチーフとして考えると1〜8小節すべてで1つのモチーフとなるのですが、1〜4小節、5〜8小節と2つの流れがあります。1〜4小節ではメロディが徐々に上がっていく作り、5〜8小節では HiC#〜HiF# の中でのメロディラインが構成される作り。どちらも作りは違いますが力強さがあるメロディとなっています。
リズムとしては1〜4小節で4分音符や2分音符などの長い音符を使用することにより言葉1つ1つを強調しています。後半5〜8小節では シンコペーション を使用してリズムに疾走感を作り出しています。
サビはとても感情移入しやすいセクションとなるのでハシらないように注意したいところ。しっかり地に足をつけてどっしりと歌い切ってください。
いかがだっただろうか?
サウンド自体は1960年代のアメリカンポップスとなっているので一見明るく軽快な楽曲に感じますが、歌詞の意味を考えるだけでとても胸が締め付けられるような切ない楽曲となる。なぜ明るいサウンドにこのような切ない歌詞を乗せたのかを考えるだけでも色々な考察ができると思います。音楽の解釈は自由で良いと思うので、様々な角度からこの素晴らしい楽曲を聴いて欲しい。
「君は天然色」と合わせて学びたい関連楽曲
同時代のシティポップ・歌謡曲の名曲では 久保田早紀「異邦人」 、80年代の名曲では 杏里「オリビアを聴きながら」 、同じく80年代ロックの名曲では レベッカ「フレンズ」 もぜひチェックしてみてください。「君は天然色」と合わせて聴くことで、日本の80年代ポップスへの理解がより深まります。
声について
バンドのリズムが複雑でアグレッシブな反面、歌は滑らかで曲全体の雰囲気を柔らかく印象づけています。Aメロからサビまで音色の変化は少なくし、高音域でも広がりや昂まりを感じさせつつスムーズな歌唱を目指しましょう。
軟口蓋を少し下げて美音化させて歌う と良いでしょう。また、声だけではなく言葉の繋げ方にも工夫が必要です。軟口蓋を少し下げることによって、歌唱時にハミングのような状態を作り出せます。それを維持したままで子音や母音を発音してみましょう。軟口蓋を必要以上に下げすぎると、ピッチに影響したり音量が小さくなったりする可能性がありますので、自分のベストポジションを探して練習しましょう。
🎤 「君は天然色」を歌いこなしたい方へ
「君は天然色」のような難易度Aクラスのシティポップを歌いこなすには、 シャッフルビートと2拍3連を柔らかく感じるリズム感、ラインクリシェ・サブドミナントマイナー・セカンダリードミナントを聴き分ける耳、HiF#までの広い音域を安定して歌う声帯コントロール、軟口蓋を下げた美音化発声、松本隆の切ない詞世界を表現する繊細な歌唱力 が不可欠です。モア東京ボーカル教室では、現役プロ講師が一人ひとりの声質と目標に合わせて、本格的なボイストレーニングをご提供しています。
こんな方におすすめ
- 🎤 ベーシックレッスン
軟口蓋コントロールや美音化発声を本格的に学びたい方へ - 🎤 高音を手にしたい方へ
HiF#までの広い音域を安定して歌いたい方へ - 🎤 カラオケで上手に歌いたい方へ
「君は天然色」や大滝詠一の楽曲をカラオケで歌いこなしたい方へ - 🎤 ライブに出演して歌いたい方へ
シティポップの名曲を人前で披露したい方への実践レッスン
プロ講師の指導で、難曲も自分の声で歌いこなせるようになります!










