【第1回 リズムと歌唱】歌の土台は“声”ではなく“リズム”
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「歌は声がすべて」——そう思い込んでいる人は多いのではないでしょうか。
しかし音楽理論の根幹において、**リズム(time)**はメロディーやハーモニーに先立つ要素とされています。音楽教育の現場では「リズム・フィールがなければ、いかなる音高も意味を持たない」と教えられるのが常識です。
モア東京ボーカル教室では、この「リズム・トレーニング」を講師全員が徹底している点。定期的に行われる*リズム研修(リズム・クリニック)*では、拍節(meter)、表拍(downbeat)、裏拍(backbeat)、シンコペーション(syncopation)といった基礎概念を身体で再確認し、それを歌唱指導へ落とし込む作業を行っています。
リズムとは何か——拍節構造の再定義
このコラムでは、以下のように定義します。
「リズムとは音と音のあいだの規則的時間。すなわちインターヴァルの均質性です」。
リズムとは単なるテンポ(BPM)の話ではなく、アンサンブルを可能にする時間構造。拍子(time signature)、拍感(pulse)、そしてグルーヴ(groove)。これらが揃って初めて音楽は機能します。
「リズム感がない人はいない」
初めての方ほど「自分はリズム感がない」と口にします。しかしリズム感の欠如は存在しません。「リズム感がない人はいない。弱いだけだ」と考えています。
**プロシージャル・メモリー(手続き記憶)**として獲得されたリズム感は、自転車の乗り方と同じく長期保持されます。つまり、習得は可能であり、一度身体化すれば容易に消えないのです。
声以前に「タイム」を刻む
まずを体で刻む。
- 足踏みでダウンビートを確認
- 体重移動でバックビートを感じる
- 3連符の第3音を意識して「シャッフル感」を体感
これらは単なるリズム練習ではなく、**身体運動としてのタイム感(kinesthetic sense of time)**を鍛えるものだ。声はその上に乗る大切な二次的要素になるのです。
他スクールとの違いとは
多くのボイトレスクールは**呼吸法や声区融合**に重点を置くことが多いです。一方、モア東京ボーカル教室では、その前提条件として「タイム・フィール」を必須としています。リズム感が安定すれば、音高(pitch)の修正も容易になり、フレーズ全体が“音楽的に”立ち上がります。
次回は、J-POPを支える5大リズム——8ビート、2ビート、4ビート、16ビート、ラテンビート——を分析します。
【第4回 リズムと歌唱】最新J-POPに見るリズムの進化 事例で検証:King Gnu『白日』
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