音楽&歌に役立つコラム

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―「なんとなくの発声指導」が引き起こす見えないリスク―

最近、他のボーカルスクールから移籍される方の中で、ある共通した違和感を口にされるケースが増えています。「レッスンを受けるほど声がかすれる」「発声方法に不安がある」という声です。

 

実際に内容を伺うと、いくつかの特徴的な指導パターンが見えてきました。


ウォーミングアップ不足のまま高負荷発声

 

特に多いのが、レッスン開始直後にいきなり「ガ(Ga)」などの子音を使って高音域まで発声させるケースです。

 

この発声は、声門閉鎖(声帯を閉じる力)が強く働きやすく、声帯同士を厚く接触させる方向に作用します。本来、こうした発声は、準備が整った状態で、段階的に行うべきものです。

 

ウォーミングアップなしで行うと・・

  • 声帯への過度な負担
  • 喉の過緊張
  • 声のかすれや引っかかり

といった状態を引き起こす可能性があります。


順序が逆転しているトレーニング

 

もうひとつ見られるのが、発声後にリップロールを行う流れです。

本来、ボイストレーニングでは

  • リップロール/ハミング/ストロー
  • 軽い発声

といった息の流れを整えるプロセスを先に行い、その後に発声練習へと移行するのが基本です。

 

この順序が逆転している場合、声帯や呼吸の準備が整わないまま負荷をかけてしまい、結果的に発声効率が下がるだけでなく、喉のコンディションを崩す要因にもなり得ます。


なぜこのような指導が起きるのか

 

こうしたケースの背景には、いくつかの共通した要因があります。

 

① 解剖学・生理学(体内で起こる物理現象)の知識不足

発声は「感覚」だけでなく、

  • 声帯の構造
  • 呼吸との連動
  • 筋肉の働き

といった理解が不可欠です。これらが不十分な場合、負担の大きい発声を無自覚に指導してしまう可能性があります。


音の状態を正確に聴き取れない(実はここが大事!)

 

適切な指導には、

  • 声帯が締まりすぎているか
  • 息が流れているか
  • 無理な圧がかかっていないか

を「耳で判断する力」が必要です。ここが弱いと、問題のある発声をそのまま進めてしまうことになります。


教室側の研修・方針の不在

 

個々の講師の能力だけでなく、

  • 指導の共通基準
  • トレーニング手順の統一
  • 継続的な研修体制

が整っていない場合、レッスン内容が講師ごとにばらつき、結果として当たり外れが生まれやすくなります。


「すぐできる発声」には注意が必要

 

短期間で強い声が出るように感じる指導は、一見すると効果的に見えることがあります。

しかし、

  • 喉に過度な負担がかかっていないか
  • 再現性があるか
  • 長期的に維持できるか

という視点で見ることが重要です。

 

発声は本来、積み重ねによって安定していくものであり、無理な方法で一時的に出した声は、後に不調として現れることも少なくありません。


ボーカルスクール選びで見るべきポイント

 

安心して学べる環境かどうかを見極めるために、以下の点はひとつの判断基準になります。

  • ウォーミングアップの流れが生理学にもどづいているか
  • 無理に高音を出させていないか
  • 発声後に喉の違和感が残らないか
  • 指導内容に一貫性があるか

丁寧に探っていきましょう。


 

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