腹式呼吸と声の出し方|劇団四季メソッドに学ぶ呼吸法
「いい声」は喉から出すものではない
「もっと大きな声を出したい」「聞き取りやすく話したい」「歌うとすぐに息が苦しくなる」。
そんなとき、私たちはつい「喉」や「声帯」に意識を向けがちです。しかし、劇団四季のメソッドでは、声を考えるときにまず重要になるのは呼吸です。
このページでわかること
「出る息に音が乗って声になる」という考え方
声帯は音源、身体は楽器
なぜ腹式呼吸が大切なのか
「たくさん吸う」より「しっかり吐く」理由
声はどのようにして生まれるのか
声を出すためには、まず肺から息が送り出されなければなりません。その空気が声帯を振動させ、さらに口腔や鼻腔、身体へと響いていくことで、私たちが「声」として聞いている音になります。
つまり、声は喉だけでつくられているものではありません。この関係は、「出る息に音が乗って声になる」と説明されています。
この考え方は、話すときにも歌うときにも大切です。長い文章を最後まで明瞭に話したければ、それだけ長く安定して息を送り続ける必要があります。声を整えることは、まず息を整えることなのです。
声帯は「音源」、身体は「楽器」
もう一つ重要なのが「共鳴」です。
肺から送られた空気によって声帯が振動しても、それだけでは豊かな声にはなりません。その振動が身体の中で響くことで、声に広がりが生まれます。
人間の身体も「胴」を持つ楽器
バイオリンやギター、ピアノなどの楽器に「胴」があるのと同じように、人間も身体を共鳴させて声を響かせます。
この考え方を浅利慶太氏に若い頃教えたのが、耳鼻咽喉科医で音声生理学を専門としていた林義雄氏でした。喉に力を入れて無理に声をつくるのではなく、腹筋や背筋を使って呼吸を支え、身体を共鳴させる。その知識が、後の劇団四季の発声の考え方にも大きくつながっていきます。
パバロッティの稽古で見たもの
浅利氏は1986年、ミラノ・スカラ座で『蝶々夫人』を演出した際、ルチアーノ・パバロッティの稽古を見学しています。
そこで目にしたのも、喉を深く開き、腹・背筋を使いながら身体全体を響かせる発声でした。
だからこそ劇団四季では、「美声を目指すな」と教えるといいます。
生まれ持った声質そのものを無理に変えるのではなく、自分の身体を正しく使い、本来持っている声を無理なく響かせる。その土台となるのが呼吸なのです。
なぜ「腹式呼吸」が大切なのか
呼吸には、大きく分けて胸式呼吸と腹式呼吸があります。
緊張しているとき、私たちは胸や肩を上下させながら浅く速い呼吸をしやすくなります。反対に、リラックスして眠っているときには、自然にお腹を使った呼吸になります。
劇団四季が重視するのは、腹・背筋を使った腹式呼吸です。腹式呼吸によって身体の奥に息を取り込み、それを少しずつ安定して送り出すことで、落ち着いた話し方や長いフレーズにつながっていきます。
「お腹」はおへそ周辺だけではない
息を吸ったとき、お腹の前だけでなく、横腹、さらに腰のあたりまで胴体全体が広がっていく感覚を持つことがポイントです。
丹田を中心に、胴回りがビア樽のように膨らむイメージで捉えてみましょう。
まずは仰向けに寝て練習する
初めは立って練習するより、仰向けに寝て行うほうが感覚をつかみやすくなります。
頭、首、肩、背中、腰、脚と順番に余計な力を抜き、身体を床に預けた状態でゆっくり呼吸します。
大切なのは「たくさん吸う」より「しっかり吐く」
呼吸というと、「大きく吸わなければ」と考える人が多いのですが、劇団四季の呼吸法で特に大切にされているのは、むしろ吐き切ることです。
吐き切れば、自然に入ってくる
息が中途半端に残ったままでは、次の新しい息を十分に取り込むことができません。
先にしっかり吐けば、その反動で自然に新しい息が入ってきます。呼吸で大事なのは、まず「吐き切る」ことなのです。
練習では、短い時間で息を吸い、吐く時間を少しずつ長くしていきます。
これは単なる肺活量のトレーニングではありません。
声を出している間、私たちは息を吐き続けています。つまり、吐く息をどれだけ安定してコントロールできるかが、そのまま声をどれだけ安定して扱えるかにつながるのです。
呼吸の上に「言葉」を乗せる
呼吸が整ったら、そこに発声を加えていきます。
喉の奥は「あくび」をするときのように開き、「ア・イ・ウ・エ・オ」の口の形をしっかりつくる。そして、下腹の動きと声を連動させながら、息の通り道を身体で覚えていきます。
「レギュラー表」で母音から子音へ
さらに劇団四季では、「レギュラー表」と呼ばれる発声表を使い、母音から子音へと練習を広げていきます。
基本となる「ア・イ・ウ・エ・オ」の形ができれば、そこへ子音を乗せて日本語の音をつくっていく、という考え方です。
まとめ|「いい声」をつくる第一歩
ここに、劇団四季の「美しい日本語」の土台が見えてきます。
美しい声とは、単に声質が美しいことではありません。
言葉が届くまでの流れ
呼吸があり、その息に声が乗り、その声に正確な母音と子音が乗り、最後に言葉として相手へ届く。
だから、声を良くしようとして喉だけを鍛えるのではなく、まず身体の力を抜き、呼吸を整えることから始める。
「いい声」をつくる第一歩は、意外にも声を出すことではなく、自分がどのように息を吸い、どのように吐いているのかを知ることなのかもしれません。
参考文献
この記事は、『劇団四季メソッド「美しい日本語の話し方」』を参考に構成しています。四季を目指す方にはもちろん、日本語をより美しく話したいすべての方におすすめの一冊です。
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呼吸法は、自分では正しくできているか判断しにくい技術です。モア東京ボーカル教室には、劇団四季の舞台に出演していた講師が在籍。身体の使い方を実際に見ながら、マンツーマンで指導します。浦安・津田沼・葛西・錦糸町の4校とオンラインで、東京・千葉エリアから通えます。







