本当の私の歌い方・意味|バケモノの子/楓|劇団四季|モア東京ボーカル教室
本当の私|劇団四季ミュージカル『バケモノの子』
劇団四季ミュージカル『バケモノの子』で楓が歌う「本当の私」は、優等生として生きてきた少女が、歌いながら自分の本心に出会っていくソロナンバーです。最初から「強い楓」を作ってはいけない。その理由と歌い方のポイントを、プロのミュージカル俳優が解説します。
このページでわかること
劇団四季『バケモノの子』の作品背景
楓が抱えていた「本当の私」という問い
「話す」から始める歌い方
クライマックスに必要な「意志のある声」
劇団四季『バケモノの子』とは
劇団四季のミュージカル『バケモノの子』は、細田守監督による同名アニメーション映画を原作に、劇団四季がオリジナルミュージカルとして舞台化した作品です。
脚本・歌詞を高橋知伽江、作曲・編曲を富貴晴美、演出を青木豪が担当。2022年4月30日に開幕したオリジナルミュージカルです。
あらすじ|血のつながりを超えた親子
物語の主人公は、9歳で母を亡くし、ひとりぼっちになった少年・蓮。行き場を失った彼は、偶然出会ったバケモノ・熊徹に導かれ、人間界とは別の世界「渋天街」へ迷い込みます。そこで「九太」という名を与えられ、熊徹の弟子として暮らすことになります。
乱暴で不器用な熊徹と、反抗心の強い九太。最初は衝突ばかりしていた二人ですが、修行と生活を共にするうちに、いつしか血のつながりを超えた親子のような絆を育んでいきます。
やがて17歳になった九太=蓮は、再び人間界へ足を踏み入れます。そこで出会うのが、高校生の少女・楓です。幼い頃から渋天街で育った蓮にとって、勉強を教えてくれる楓は、人間界での「師匠」のような存在。
しかし興味深いのは、楓が一方的に蓮を導く存在ではないことです。
二人が抱える、それぞれの問い
蓮:「自分は人間なのか、それともバケモノなのか」
楓:周囲から見れば優等生でありながら、「自分は誰のために生きているのか」
つまり『バケモノの子』は、熊徹と蓮の親子の物語であると同時に、「自分は何者なのか」を探す若者たちの物語でもあります。
誰かから与えられた名前や役割だけで生きるのではなく、自分自身で「どう生きるか」を選んでいく。その作品全体のテーマを、楓という一人の少女の視点から鮮やかに描き出しているのが「本当の私」です。
「本当の私」はどんな曲?
「本当の私」は、第2幕で楓が歌うソロナンバーです。
楓は、正義感が強く努力家で、進学校に通う優等生。蓮に勉強を教え、彼が新しい世界へ踏み出す手助けをする存在です。しかしこの曲で明らかになるのは、そんな「しっかりした女の子」という表面だけではありません。
彼女自身もまた、自分の生き方に迷っているのです。
「正しい人生」と「自分が選んだ人生」
幼い頃から期待に応え、周囲が望む「良い子」であろうとしてきた楓。勉強を頑張り、きちんとした進路を歩み、大人から見れば何の問題もないように見える。
しかし、「正しい人生」を歩いていることと、「自分が選んだ人生」を歩いていることは同じではありません。
そんな楓の心を動かしたのが蓮でした。
学校教育から長く離れていた蓮は、楓にとって自分とはまったく違う人生を歩んできた人物です。ところが彼は、知らないことを恥じるのではなく、新しいことを知ろうとし、自分が何者なのか、これからどう生きたいのかを必死に探しています。その姿をそばで見ているうちに、今度は楓自身が「私はどうしたいのだろう」と問い始めます。
「決意の歌」ではなく、「気づいていく歌」
この曲は、最初から力強い「決意の歌」なのではありません。
それまで心の奥にしまっていた違和感を言葉にし、話しているうちに自分自身の本心に気づき、最後には「自分の人生を自分で選びたい」という意思へたどり着いていく歌なのです。
そして重要なのは、これは蓮だけの成長物語ではないということ。楓は蓮に勉強を教えますが、楓もまた蓮との出会いによって変わっていきます。
「本当の私」は、誰かとの出会いによって、自分でも気づいていなかった「自分自身」を発見していく。その瞬間を描いた、とてもミュージカルらしいナンバーなのです。
「本当の私」の歌い方・ポイント
この曲を歌うときに最も大切なのは、最初から「強い楓」を作らないことです。
タイトルが「本当の私」だからといって、冒頭から「私は私らしく生きる!」という強い意志を全面に出してしまうと、この曲のドラマが平坦になってしまいます。
① 冒頭は「歌う」より「話す」
曲の出発点にあるのは、「初めて人に話す」という感覚です。普段は優等生として振る舞っている楓が、蓮の前だからこそ少しずつ自分の内側を見せていく。
歌詞を一つひとつ説明する必要はありません。目の前に蓮がいて、その人に初めて自分のことを話している。その距離感を持つだけで、言葉はずっと自然になります。
② 最初から答えを知っていてはいけない
「親の期待に応えてきた自分」「周囲から見られている自分」「でも、本当はどうしたいのか」。そうした思いを言葉にしていくうちに、楓自身が自分の気持ちを発見していきます。
歌いながら考え、歌いながら気づく。その「発見」を大切にしてください。フレーズごとに「この言葉を口にしたことで、次に何を思ったのか」を考えると、歌が一本のドラマとしてつながっていきます。
③ 声も「話し声」から始める
前半から強い声量や張った高音で押してしまうのではなく、話し声に近い自然な響きから始め、気持ちが外へ向かっていくにつれて声のエネルギーを増やしていく方が効果的です。
④ クライマックスに必要なのは「意志のある声」
クライマックスで必要なのは、単純な「大きな声」ではありません。必要なのは意志のある声です。
息の流れを止めず、子音を明確にしながら、日本語の言葉が前へ進んでいくように歌いましょう。特に自分の意思を示す言葉では、母音だけを美しく響かせるより、子音を含めた言葉そのものを相手へ届けることが重要です。
この曲で描かれているのは、「強い女の子」ではなく、自分の人生を自分で選ぼうとし始めた女の子です。
迷いがあるからこそ、決意が輝きます。
「きれいに歌おう」「感動的に歌おう」とするのではなく、楓が蓮に話しながら、初めて自分自身の本音に出会っていく。その瞬間を丁寧に追いかけること。それが、「本当の私」を魅力的に歌う一番のポイントです。
こうした役の内面の変化を声で描く表現は、独学では難しい部分でもあります。モアのミュージカルレッスンでは、元劇団四季・東宝出演の講師が、曲の背景理解から「役として歌う」表現まで丁寧にサポートします。
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この曲を歌ってみたい方へ|モア東京ボーカル教室
モア東京ボーカル教室の講師陣には、劇団四季の舞台に出演していたプロのミュージカル俳優が在籍しています。「本当の私」のような役の心の変化を声で描く難曲も、人物像の理解から発声・表現まで、マンツーマンで丁寧に指導します。浦安・津田沼・葛西・錦糸町の4校とオンラインで、東京・千葉エリアから通えます。









